医療機関の診療報酬請求権を買い取って「レセプト債」として227億円分を発行していた運用会社「オプティファクター」(本社・東京都品川区)と「メディカル・リレーションズ・リミテッド」(同・同都新宿区)など4社が破綻した問題が、北海道に飛び火している。債券販売を新たな収益の柱にしようと事業展開している上光証券(同・札幌市中央区)がこの会社の扱ったレセプト債13億2300万円分を313の個人、企業に販売していたからだ。(写真は、上光証券本社)
レセプト債は確実に現金化できる請求権のため通常は償還不能などあり得ず、監査法人がチェックした金融商品が破綻するには別の理由があったと考えられる。実際、オプティ社は、死去した創業社長時代、多額の実態のない資産や売上げが計上されていたことを認めており不正があったことは明らか。
上光証券は、オプティ社などに一括返済を求める方針だが、破産を申し立てた会社の配当は一般的に債権総額の10%もあるかどうかで、実際のところ債券を購入した個人投資家などへの全額払い戻しは難しい。
上光証券が債券販売に取り組み始めたのは、北洋銀行常務だった松浦良一氏が上光証券社長に転じた2007年6月以降。それまでは、株式と投資信託の販売手数料がメーンで、株式市況に業績が大きく左右されるため赤字と黒字を繰り返し経営は不安定だった。松浦社長は、債券販売に力を入れることで収益の安定を図ろうとした訳だ。
以降、債券販売による手数料収入は大きく伸びて、この3年間を見ると債券販売による手数料収入は3億円台で安定。株式、投信、債券は収益の3本柱に成長してきた。2011年3月期は1億2500万円の純損失だったが、12年3月期1億4500万円、13年3月期4億1300万円、14年3月期2億7100万円と着実に純利益を稼ぎ出している。16年3月期の4~9月期は特別利益としてヘルスケアリート配当金4億4千万円が計上されたという。
同社は16年4月が創業80周年。株式、投信、債券の3本柱構築による安定的収益確保という新しいビジネスモデルが固まろうとしていた矢先にレセプト債問題に見舞われた。
オプティ社の不正が濃厚だが、真相は破産手続きが始まらなければ判然としない。市場リスクによるデフォルト(償還不能)ではなく経営者リスクによるデフォルトを防ぐ手立てはないものか。監査法人による監査はそのためのものではないのだろうか。