早大恩蔵直人教授が流通講演、「時間軸で消費行動は変わる」「決定を回避する消費行動」「選択を正当化するフェイシング」

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IMG_8182 マーケティング戦略が専門の早大商学学術院教授の恩蔵直人氏は、コープさっぽろの取引先でつくる生協会総会で講演、「マーケティングは機能的・情緒的価値に加えて社会的価値が取り込まれた『3・0』へ進化している」と具体例を挙げて説明、さらに行動経済学から見たマーケティングの例として「消費者は選択肢が多すぎると決定を回避してしまう。また消費者は自分を正当化しやすい」などと述べた。(写真は、講演する恩蔵直人教授=2014年6月23日生協会総会で)
 
 
 
 恩蔵教授は、マーケティングは『1・0』の製品中心の考え方から『2・0』の顧客中心の考え方へ進化し、現在は『3・0』に差し掛かっていると説明。「花王のアタックNeoは、濯ぎ1回で汚れが落ち綺麗に仕上がる。従来の衣料用洗剤は濯ぎが2回必要だったが、1回にすることで節水や節電といった社会的価値を取り込んだこがとヒットの要因」と紹介。また、コカ・コーラの『い・ろ・は・す』ついて、従来の水市場にフードマイレージやカーボンフットプリント、ロハスという環境保護のコンセプトを盛り込んだことが大ヒットの要因として、「2つの商品のキーワードは社会的な価値。消費者をモノを買うだけの対象と見るのではなく、マインドやスピリチュアルな面を含めた全人的な存在として見ていこうとするもの。これをマーケティング『3・0』と呼んでいる。機能的な価値だけでなく社会における企業の役割、責任を認識してビジネス活動の中で社会的価値の創造を実現していくのが『3・0』のメッセージだ。マーケティングそのもののベース、ステージが変わってきている」と訴えた。
 
 また恩蔵教授は、行動経済学から見たマーケティング戦略をスーパーの売場でも実践することが売上増に繋がるとして3つの例を挙げた。一つは、消費行動と時間軸の関係で、例えばデジカメを例に購買までの時間が長いと人々は画質が良いなど本質的な部分に目が行くが、購買直前になると使いやすさ、デザインなどを重視するようになると指摘、「時間感覚によって購買動機が変化する消費者のマインド傾向を考えてチラシと店内POPの作り方を変えた方が効果的」と述べた。
 
 次に紹介したのが決定回避の法則。これは売場で6種類のジャムと24種類のジャムを並べた場合の消費行動を研究したもので、ジャムの種類が多いほどより多くのお客がその売場に訪れるが、実際に購入するのは6種類に絞られた方の売場。「これは決定回避の法則と言われるもの。選択肢が増えれば増えるほど良いと言うのが従来の考え方だったが、選択肢が多すぎると消費者は自らの選択が間違いじゃないか、失敗じゃないか、後悔するんじゃないかと考えてしまい決定を回避する傾向がある」として適度な種類を陳列することが購買に繋がると強調した。多数の中から選択する場合には、消費者は自身の選択を正当化しやすいものを選ぶ傾向があるとして、ローカロリーなどのカテゴリーを陳列することで決定回避は防げるとした。
 
 さらに「消費者は一旦手に入れたモノの価値を本来の価値より高く見積もる傾向がある」と語り、「新しい商品への買い替え消費を促すためには下取りセールなどでこうした保有効果を低減させることが有効」と示唆していた。

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