北洋銀行(本店・札幌市)は、北海道大学との包括連携事業の一環として取り組んでいる「市民医療セミナー」を22日からスタートさせた。4年目となる今年度も8回のセミナーを実施、一線で活躍する医学者が病気の原因や治療、予防について分かりやすく解説する。1回目は北海道医療大学看護福祉学部教授の小林正伸氏が『がんはどうしてできるのか?』をテーマに講演、会場の北洋大通センター4階セミナーホールには市民約80人が集まって聴講した。(写真は、講演する小林正伸教授)
小林教授は、北大医学部を卒業後に留学などを経て北大癌研究施設病理部門でがんの病理について研究、2006年から道医療大に移った。北大大学院医学研究科がん予防内科学講座の客員教授も務める。
ヒトの体は約60兆個の細胞からなっており、10億個が1gに相当するという。ヒトは毎日3000億個(300g)の細胞を増殖して新しい細胞と古くなった細胞と入れ替えている。正常細胞は必要な数だけ増殖してプラスマイナスがイコールの状態で均衡する。
「正常細胞は細胞が死んだときに遺伝子が『新しく作りなさい』と命令して同じ数だけ作るが、遺伝子にキズが付くとブレーキがきかなくなって常にアクセルを踏みっぱなしの状態になる。増殖がとまらないのが、がん細胞」と小林教授は説明する。
細胞の増殖では3億回に1回、遺伝子がコピーミスをすることがあって、それが遺伝子の変異とされ生物の進化にも関係しているそうだが、そうしたコピーミスを修正する遺伝子もある。ところが遺伝子にキズがついていると修正が効かずがん細胞の増殖スイッチがオン状態になってしまうという。
小林教授は、「遺伝子にキズを付ける原因で一番大きいのは喫煙とアルコール、それに肥満。特に喫煙と適量を超えたアルコールは放射線による被爆よりも高いがんのリスク要因。とりわけ喫煙は原爆級のリスクだ」と指摘、北海道で膵臓がんが多いのは喫煙率が女性で全国1位、男性で2位という多さにも関係していることを示唆した。
煙草の有害物質は主流煙よりも副流煙に圧倒的に多く含まれるため、小林教授は「喫煙はまさに環境テロ。喫煙者はテロリスト」と過激なトークで危険性を訴えていた。
講演後には、参加した市民から「ストレスによってがんになるのか」や「電磁波の影響は?」など質問が出て、小林教授は「ストレスは免疫機能を低下させるのでがん細胞の増殖に影響してしまう」、「電磁波によってがんが増えることはないというのが今の定説」などと丁寧に答えていた。
なお、次回の市民医療セミナーは5月20日、「内視鏡治療はここまで進化した」をテーマに北大病院光学医療診療部の小野尚子助教が講演する。入場料無料で定員は120人。問い合わせは、北洋銀行法人部(電話011・261・2579)。