連載[北のミュージアム散歩]

 「北のミュージアム散歩」は、道新文化センターのノンフィクション作家を育成する「一道塾」(主宰・合田一道)の塾生が書いた作品を連載するものです。道内にある博物館、郷土歴史館、資料館などを回り、ミュージアムの特色を紹介しながら、ミュージアムの魅力やその存在する意味を問いかけます。
 第84回は、岩見沢市の「岩見沢郷土科学館」です。ぜひご愛読ください。

(合田一道)

■第84回 岩見沢郷土科学館
-四季の星空を仰ぎ、郷土の歴史を語り合う-


郷土科学館

 岩見沢郷土科学館は、岩見沢市のいわみざわ公園内にある郷土資料館・科学館である。ふるさと創生事業の交付金を活用して、1992年に創設開館された。バラ園に隣接し緑と季節の花に囲まれて訪問者を待っている。

 施設の概要としては、郷土資料展示室とプラネタリウムを併せ持ち、収蔵展示や常設展示の他に特別展示も行っている。
1階にはアトリウム、ホール、昔なつかし展、化石・土器展示室等がある。
 昔なつかし展には、昔の遊びとおもちゃ「おじいちゃんおばあちゃんの子どものころ」と題した写真と解説文のついた小冊子があり、自分で遊びを体験できる。だるま落とし、ポンポン鉄砲、いろいろなコマ等々がある。
 化石・土器の展示室には、栗沢町加茂川遺跡から縄文前期のものといわれている「まんじゅう石」3点、同由良遺跡からは縄文中期の「丸のみ型石器」4点、後期旧石器時代の「黒曜石など」6点が発掘され、指定文化財として展示されている。

 2階の収蔵展示室には「岩見沢のむかしを調べよう」と題して、明治・大正・昭和時代に使用した農機具、生活用具などが展示されている。
先ずは「岩見沢の開拓と地名の由来」についての説明がある。「明治11年(1878)開拓使は、三笠幌内炭鉱を開鉱するために、札幌と幌内間に道路を開通することにした。そのため、中継地点にあった今の幾春別川沿いの元町付近に官営の休憩所を設置して浴場を備えた。道路建設に当たった作業員たちは、ここで沐浴をして疲れを癒した。そのことからこの地を浴澤(ゆあみざわ)というようになり、それが岩見と転化して岩見澤と呼ばれるようになった。」(「岩見澤紀碑」の碑文より)と紹介されている。
 「大昔の人たち」、「開拓者が入植したころ」、「わらを使った」、「おじいちゃんおばあちゃんの子どものころ」、「炭鉱がさかんだったころ」の暮らしの再現、「鉄道の歴史」や「岩見沢の野生生物」の剥製が展示され、小中学生にも理解できるよう解説に工夫がされている。明治16年以降、開拓士族が岩見沢に入植し、また、岩見沢を基点にして新たに炭鉱が開発され、それに伴って鉄道や道路の整備や拡充・新設がされた状況が理解できる。特別展示の一つとして、北海道唯一の札幌県勧業課の号鐘「東町の号鐘」がある。それは「開拓の鐘」ともいわれ、明治18年に岩見沢の東町に移住した士族達に開墾作業の時刻を告げた。道内の3ヶ所に設置されたが、東町の鐘だけが残り保存されている。移住士族取扱細則によって、開墾の厳しい生活を伺い知ることができる。


開拓の鐘

 3階にはプラネタリウムがあり、直径12メートルのドームスクリーンに星空を映し出し、星座絵や約6,200個の星々の動きを鮮明に再現する。四季の星座とそれにまつわる物語を楽しめると同時に今日の星空をリアルタイムに見ることができて驚きである。当館のプラネタリウム装置は、国立科学博物館の未来技術遺産に登録されている機種で、6等星までの恒星を映し出す性能がある。この投影機も貴重な展示品となっている。小学生から一般を対象に前庭や1階のアトリウムで天体教室を開催している。
 郷土科学館は、年間の入場者数は5,000人ほどで、小中学生の団体入場が多い。子どもたちの科学する心を育んでいる。


光学式プラネタリウム

利用案内
住  所:〒068-0833 岩見沢市志文町809番地1
電話案内:0153-72-2190
開館時間:午前9時30分~午後5時(火曜日は午後1時30分~午後5時)
休 館 日:月曜日・年末年始(12/29~1/3)
     (月曜日が祝日の場合は開館する)
入 館 料:一 般:310円(プラネタリウム:+210円)
     高校生:210円(プラネタリウム:+150円)
     小・中学生:100円(プラネタリウム:+100円)
     ★プラネタリウムの観覧は入館料も必要である。
     ★団体は20名以上で料金は2割引きとなる。
お問い合わせ先:岩見沢郷土科学館
電  話:0126-23-7170
交通機関:バス/岩見沢駅前から中央バス
     万字線「いわみざわ公園前」下車
パーキング:300台(無料)

付近の見どころ
「早世の作家辻村もと子の住んだ家」
 岩見沢が生んだ作家辻村もと子は明治開拓期の空知を描いた「馬追原野」で、樋口一葉賞を受賞。別の作品で芥川賞候補にも選ばれたが、40歳で病死している。JR志文駅に近い広大な屋敷林の中に、もと子の父直四郎が大正2年に建てた木造平屋約200平方メートルの家がある。屋内には樋口一葉賞の賞状やもと子の生涯を紹介するパネル開拓時代の写真等が展示されている。

文:黄瀨 芙美子 / 写真:岩見沢郷土科学館提供

<< 第83回  第85回>>