札幌市中央区北5条西8丁目にあった伊藤組土建名誉会長、伊藤義郎氏の邸宅が取り壊された。写真上のような地元名士に相応しい瀟洒な建物は跡形もなく、今は写真下のように白いシートの内側はすっかり整地された土地だけになっている。周囲を威圧するような門構えは残っているが、守るべき邸宅を失った遺構のように佇んでいる。P1070571(写真は、取り壊される前の伊藤邸=2013年4月8日撮影)IMG_0216(邸宅は取り壊されてシートの裏は整地された土地だけになった=2015年11月26日撮影)

 伊藤邸が取り壊されるまでの経緯はこうだ。 北海道の開拓を支えてきた伊藤組土建当主が住み続けてきた伊藤邸の建つ敷地約1・4haは、植栽の種類や湧水が出るメムの跡などから開拓当時の札幌の原風景が残っている貴重な土地とされてきた。しかし、3代目当主の伊藤義郎氏は、後継者難などから土地を一部手放して土地の有効活用を模索。
 札幌市の都市計画審議会では保存か開発かで大きく揺れたが、邸宅の建っている場所の開発は認めるが周辺の樹木の生い茂る土地は保全することで昨年9月、開発を許可することになった。それを受けて住友不動産(本社・東京都新宿区)が昨年末に伊藤邸の建っている敷地約0・5haを取得していた。
 
 住友不動産は、邸宅を取り壊した跡に建築面積約1600㎡、地下1階、地上30階建て(高さ99・95m)、延床面積4万3500㎡、344戸の高層賃貸マンションを計画したが、附置する車庫の建設には建築基準法に基づく48条項(建築用途制限の緩和)適用が必要。
 48条項の対象物件となる車庫は、エレベータ式3基で高さ87m、収容台数は236台。車庫は建物内に取り込む形状になるが、この48条適用が市の建築審査会を通過したのが今年の10月13日だった。
 
 伊藤邸はこの日から本格的に取り壊されて1ヵ月半で写真のように姿を消した。そして間もなく高層マンションと車庫の建設が始まる。工事施工は伊藤組土建が担当、工事完了は2019年2月末が予定されている。なお、邸宅敷地以外の土地は伊藤氏の所有のままで、伊藤家が将来に亘って保全していくことになっている。
IMG_0220(写真は、開発許可の看板が取り付けられている伊藤義郎邸の門)



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