IMG_9639 札幌市の都市計画審議会は9日の審議会で、開拓期の札幌の原風景が残っている札幌市中央区北5西8の伊藤組土建名誉会長の伊藤義郎邸敷地約1・4haのうち、現在自宅の建っている底地を含めた約4割の土地について高さ制限を緩和することを賛成多数で了承した。残り約6割の緑地部分について市と伊藤氏側が維持保全の協定を結ぶことを条件にしたもので、これによって高さ100mの高層マンションが建てられるようになった。(写真は、伊藤義郎邸。取り壊されて高層マンションが建設される)

 

市は、伊藤氏側から2012年10月に都市計画提案制度で第一種住居地域の高さ33m制限を緩和したいという申し入れを受けて検討。明治41年に伊藤家の所有になった敷地には開拓期の貴重な自然が残っているため、市は敷地内の植生や豊平川のメム(湧水)跡調査を実施。今年1月には上田文雄市長が伊藤義郎氏と面談して買い取りを打診したが、伊藤氏は土地に愛着があるとして引き続き所有し自然を守りながら土地の有効活用を図りたい強い姿勢を示した。

 

市は5月の同審議会に現在建屋の建っている敷地を含めた約4割の土地について、高さ100mの建物が建てられるように規制を緩和、残りの緑地保全を伊藤氏側に義務付ける地区計画案を提示していたが、審議会委員からは将来にわたって自然が維持される担保がないなど異論が出ていた。

 

委員らが実際に伊藤邸敷地を視察するなどしたうえで、伊藤邸について4回目の審議となった9日の審議会に市は伊藤氏との間で緑地の維持管理協定を結ぶことを示したことから、賛成多数で諮問案件は了承された。維持管理の協定は、保全状態に関するモニタリングを実施したり年に1回市に保全状況を報告する義務が課せられ、場合によっては現地調査をすることも盛り込まれている。現在、伊藤氏側は緑地の保全を専門の庭師に委託しており年間経費は500万円だという。
また、伊藤邸東側の西8丁目線には歩道上に樹木があることから現在の1・5m幅から敷地内に食い込む形で幅3mに拡幅することも了承された。

 

伊藤氏側は市の都市計画決定を受けて、現在の自宅を取り壊し敷地の4割をマンションデベロッパーに売却、建設されるマンションの低層階の一部を伊藤氏、他はマンションデベがそれぞれ区分所有する形式とする。3年後には地上30階、高さ100m級の高層賃貸マンションが完成する見通し。

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