苫小牧市美沢にある御前水ゴルフ倶楽部。例年であれば、プレーヤーたちで賑わうこの季節、コースもクラブハウスも静寂に包まれている。風が新緑の木々を揺さぶる音と上空を飛ぶ飛行機のジェット音が時おり耳に入ってくるだけ。再建が宙に浮いたこのゴルフ場に、再びプレーヤーたちが戻ってくるのはいつになるのだろうか。(写真は、御前水ゴルフ倶楽部のコースとクラブハウス=5月10日撮影)
 
 御前水ゴルフ場を運営する美々リゾート開発(蔦森清克代表取締役)が民事再生法を申請したのは、昨年3月。ただちに再生計画の開始決定が出され、計画案作りがスタート。4月後半には、再生法の下でゴルフ場は再開された。
 
 再生計画の策定を巡って、美々リゾートと債権者である会員の間では、当初から温度差があったが次第にその溝は深くなっていく。
 
 裏舞台で攻防が繰り広げられている中、コースには減ったとは言え例年通りプレーヤーたちが集い、白球を追ういつもどおりの光景が見られた。
 
 シーズン終了後の集計によると、東日本大震災によるツアー客の減少や再生法によって敬遠するゴルファーもいたことから、入場者数は1万9447人と前年よりも4000人強の減少で年間売上高も2億6560万円、前年に比べて約6000万円の減収になった。
 
 そして迎えた今年3月の債権者集会。ここで、美々リゾートが提示した再生計画案は会員の反対多数で否決される。会員の有志らは、会社更生法による自主再建を目指し、即座に更正法申請を行ったが、4月末に札幌地裁はこちらも棄却の決定を出す。有志らは、この決定に異議を申し立て、現在札幌高裁で審理が行われている。
 
 美々リゾートは、既に破産を視野に善後策を練っているが、有志らは新たなスポンサーを見つけ出して破産回避に懸命な努力を続けている。
 
 コースの土地は、3分の2が蔦森氏の親戚一族が所有しているが、蔦森一族は隣接するノーザンホースパークに土地売却を持ちかけているとされる。
 
 シーズン終了から現在までの半年間で、御前水ゴルフ倶楽部の再建は宙に浮いてしまった。破綻から2シーズン目を向かえたコースは、森閑と静まり返っている。時が止まったように佇むクラブハウスと対照的にグリーンの芝は青々とした葉を伸ばし、休まずに時を刻んでいる。見上げると、着陸態勢に入った飛行機が腹を見せながらジェット音を残していった。
再建か、破産か――岐路に立つゴルフ場は、人を待っているようでもあり、人がいないのを楽しんでいるかのようでもあった。


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