脊椎専門病院としての挑戦――「札幌スパインジョイントホスピタル」渡邊吾一理事長・院長に聞く

医療関係

 医療法人シンスパイン(札幌市中央区)は、脊椎・関節疾患に特化した「札幌スパインジョイントホスピタル」(同市同区北13条西19丁目1-50)を2026年8月に開業した。2016年に開設した「札幌スパインクリニック」を発展させ、約30億円を投じて専門医療機能を拡充。北海道内初となるヘリウムフリーMRIをはじめ、術中3D撮影装置やナビゲーションシステムなど先進的な医療機器を導入した。目指すのは、整形外科全般を扱う「デパート型」ではなく、脊椎という一分野に医療資源を集中させる「専門店型」の病院だ。渡邊吾一理事長・院長に、脊椎に特化した理由や病院づくりへの思い、今後の展望について聞いた。(わたなべ・ごいち)…1996年札幌医科大学医学部卒業。同大学医学部付属病院など道内の関連病院での勤務を経て、東京都済生会中央病院、旭川厚生病院、羊ケ丘病院、東北海道病院などで診療経験を積む。脊椎疾患を専門領域とし、整形外科専門医、日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医、脊椎脊髄外科専門医・指導医などの資格を取得。2016年に「札幌スパインクリニック」を開設。2026年8月、同クリニックを発展させた「札幌スパインジョイントホスピタル」を開業。54歳。

 ――まず、この場所に病院を構えた理由を教えてください。

 渡邊 当病院の患者さんは、札幌市中央区だけでなく、北海道全域からの来院を想定しています。患者さんがアクセスしやすい場所として、新千歳空港から一本で来られ、交通のハブである札幌駅に近いこの場所を選びました。近くでは北海道新幹線の札幌駅延伸工事が進んでいますが、地下を通るため騒音の心配もありません。また、北海道内で唯一となるような診療機器を導入しており、そうした環境面も含めてここが最適だと判断しました。

 ――なぜ、膝や他の整形外科分野ではなく「腰と首(脊椎)」に特化されたのでしょうか。

 渡邊 私自身のサブスペシャリティ(初期臨床研修を終えて取得する「基本領域」の専門医資格の上に、特定診療分野を深く絞り込んで極める細分化された専門領域やその資格)が背骨にあったからです。私自身が興味を持ち、得意としてきた医療を実践するための「箱」を作りたかったのです。その中心に脊椎を据えることで、同じ志を持つ人を集めたいと考えました。

 ――整形外科の中でも「脊椎」に特化する意義はどこにありますか。

 渡邊 当院は、整形外科全般を扱う「デパート」ではなく、脊椎という一点に絞った「専門店」を目指しているからです。脊椎に特化することで、医師だけでなく全職員の知識やノウハウが向上し、どこよりも良い治療成績を出せるようになります。また、スーパースターの医師に依存するのではなく、診療機器などを充実させることで、誰が担当しても継続的に高い治療レベルを担保できる体制を構築したいと考えています。

(写真は、「札幌スパインジョイントホスピタル」の外観)

 ――設備投資の規模が大きいですね。

 渡邊 総投資額は約30億円前後です。導入しているのは、北海道内初導入となるヘリウムフリーMRIや、術中3D撮影装置「O-arm」、ナビゲーションシステム「StealthStation」などです。これらは民間病院の規模ではほとんど持っていない設備ですが、脊椎に特化して資源を集中させているからこそ、こうした高額な設備に時間と力をかけることができています。

 ――脊椎疾患のニーズについてはどう捉えていますか?

 渡邊 高齢化に伴い、背骨のトラブルを抱える方は非常に増えています。脊椎は神経の通り道であり、トラブルが起きると痛みだけでなく麻痺にもつながり、ADL(日常生活動作)への障害が非常に大きいため、ニーズは圧倒的です。現在、看護師を含めたスタッフは全体で110人ほどですが、この規模の病院としては適正だと考えています。

 ――医療DXの導入目的を教えてください。

 渡邊 患者さん向けの遠隔診療ではなく、徹底した「院内の情報共有」が目的です。電子カルテをハブにし、院内をスマホ化、スタッフ全員がモバイル端末でテキストベースの情報をリアルタイムに共有できることを目指しています。これにより、検査結果なども含め、院内のどこにいても正確かつ迅速に情報を得られる体制を整えています。

 ――病院のデザインやコンセプトについてはいかがでしょうか。

 渡邊 「北日本一」を目指すという標語を院内に掲げ、北海道にいながら日本のトップに通じる医療を提供したいと考えています。特別個室などの家具には、全国に通用するクオリティを持つ地元・旭川の「カンディハウス」の製品を採用しました。これは、地元のメーカーが世界へ発信している姿が、私自身の目指すスタイルと重なるからです。

 ――今後の展望を教えてください。

 渡邊 現在、脊椎外科医4人、整形外科医1人、麻酔科医2人、非常勤の整形外科医3人という体制です。私自身、54歳となり、長く現役でいられるわけではありません。関東や東北からも患者さんが来られますが、東京にも良い病院はたくさんある中で、それでも当院を選んでいただけるのは非常にありがたいことです。そうした期待に応えるためにも、若手を育て、最新機器とシステムを整えることで、特定の医師に頼らないサステナブルなシステムを確立したいと考えています。

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