北海道の名誉フードアドバイザーを今年3月まで務めた東京農業大学名誉教授の小泉武夫氏が、7月13日に札幌市内で講演、農水産物の付加価値向上に取り組んで成功している全国の事例を紹介した。


大分県大山町では農協が自らを『プロフェッショナル農業集団』と名乗って、自分たちのパンフレットを一冊800円で売ったり、他地域の農業とは違うことに挑戦してきた。焼酎の産地ということもあって麦に特化、堆肥作りやその堆肥を使って良質の麦を生産することに成功していること、その麦は焼酎用に出荷しているが、農家がパンを作って売ったりもしているという。この結果、農家一軒の平均年収は2000万円を超えるほどになっている。
圧巻は、農家の女性たちが、大分駅前に農家レストランを出店、県を越えて福岡・博多の天神にも3軒目を出店するなど自分たちの手で事業を拡大していること。勿論、大山町で獲れた農作物を使っており、120人の雇用にも繋がっていることも紹介された。
大山町の農家は潤っているが、苦しいときに援助してくれたのが地元の商店街だったため、農家は買い物をするときにはその商店街を積極的に利用。結果、潤った商店街は地元の銀行に預金、銀行は地元の企業に融資するなど、小泉氏は大山町の例を「農業を基盤とした経済循環システムが回りだした」と述べ、「以前の日本には、こうした循環システムが出来ていたので地方の豊かさがあった」と、こうした農業や水産業を基盤にした経済循環システムを作ることが必要だと指摘していた。
小泉氏の自論は、「誰もやっていないことをやることが大切。独自性が必要でマネはダメ」。北海道で是非手掛けて欲しいと強調したのは、発酵させた唐辛子作り。
「発酵させた唐辛子は日本にはないんです。発酵させると辛味が旨みに変わる。ミャンマーでは発酵した唐辛子があって、乳酸菌の作用で酸味が辛味を押さえていて、とても美味しかった。是非、北海道で作って欲しい」と挑戦を促していた。
北海道は素材の宝庫といわれるが、大山町のような付加価値向上の取り組みは不得手。自分たちの手で自分たちの経済環境を変えていく、頼らない攻めの姿勢が付加価値アップには不可欠なようだ。

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