北洋銀行と北海道大学の包括連携事業の一環である市民医療セミナーが13日、札幌市中央区の北洋大通センター4階のセミナーホールで開かれ、市民ら約60人が参加した。今年度に入って6回目で北大大学院医学研究科腎泌尿器科外科学の篠原信雄教授が『限局性前立腺がん治療の現状と将来』をテーマに約1時間講演した。(写真は、講演する篠原信雄教授)
前立腺とは尿道を取り囲むようにあるクルミ大の臓器で前立腺液を分泌して精液の一部を作る働きがある。
前立腺の病気には前立腺がんと前立腺肥大があるが、全く違う病気。肥大は内側に良性の腫瘍が発生して尿道や膀胱を圧迫していくために自覚症状があるが、がんは前立腺の外側から発生するので尿道の圧迫などがなく自覚症状が殆どないという。
前立腺がんは、60歳代になると急速に罹患率が増え、推定で2015年の部位別がん罹患者数は男性の場合、肺がんを抜いてトップになった。その増加要因として篠原教授は高齢化と食生活の欧米化を挙げる。
「20年前に米国の泌尿器科学会に出席したとき、予防方法として紹介されたスライド写真に田植えをしている日本人の姿が写っていたことに衝撃を受けたことが今も忘れられない。日本人の昔の食生活が予防になっていると紹介されていた。つまり和食が良いということ。ハンバーガーよりおにぎり。それが前立腺がんの予防になる」と話した。
自覚症状のない前立腺がんだが、PSA検査で早期診断できるようになっている。「前立腺がんになると前立腺液に含まれるPSAと呼ばれるタンパク質が血中に流れ出すので、血液検査でかなり読める。PSA検査は前立腺がんのパラダイムシフトを引き起こした。つまり時代を変えたということができる」(篠原教授)
前立腺がんの治療には様々な選択肢があるが、そのひとつであるロボットによる前立腺全摘出術(ダ・ヴィンチ)について紹介、「北大病院ではダ・ヴィンチによる手術例は120例あるが、輸血ゼロでできる。ダ・ヴィンチを使った手術のうち現在の保険適用は前立腺がんの場合だけ」(同)
ちなみにこのロボットを使った腎臓がんの手術は来年にも保険適用になるそう。また、陽子線治療も効果的でダ・ヴィンチと陽子線治療装置の2つがあるのは北大病院だけだという。