札幌商工会議所と北海道商工会議所連合会が主催して15日に札幌市内で開催された「北海道経営未来塾第4回講演会」。講師のドトールコーヒー鳥羽博道名誉会長(79)は、「私の歩んできた道」をテーマに半生を振り返った。その講演要旨を紹介するシリーズ最終回は、「ドトールコーヒーショップ」を発案する契機になったヨーロッパ視察旅行などについてレポートする。IMG_8094(写真は、自らの半生について話す鳥羽博道氏)

 先輩の言葉に心機一転、仕事に打ち込みだすうちに「人の手本になる喫茶店を作りたい」と思うようになり、実行に移す。72年、12坪のコーヒー専門店「カフェ コロラド」を横浜で誕生させた。ブラジルから豆を輸入しているコロラドという会社から豆を購入、その会社の名前を使わせてもらった。

 ところが、その店は最初、ほとんどお客が入らなかった。健康で明るく老若男女が集える店にしようと自分の趣味に走り過ぎたからだ。あまりにお客が入らないため、社員から「社長は考え過ぎるからいけない」と言われる始末。ところが半年を過ぎるころから、なぜかお客がどんどん入るようになった。1日で12回転もする繁盛ぶり。

 すると、「コロラドをやりたい」という人がたくさん出てくるようになった。ボランタリーチェーンやフランチャイズチェーンという考えがまだ浸透していないころ。見よう見まねで店舗のサポートをして気が付いたら数年後に「カフェ コロラド」は250軒にもなっていた。

「カフェ コロラド」は、順調だったが鳥羽氏はこの業態ではいずれ頭打ちになるのではないかと危惧していた。「次の業態を考えなければならない」と思い始めた矢先に、業界で初めてのヨーロッパ旅行があった。ヨーロッパの焙煎業者や喫茶店を視察する旅行だ。

 鳥羽氏を含めて一行20人が参加、フランスではルーブルホテルに宿泊した。鳥羽氏は翌朝8時ころ、散歩をしようと凱旋門を目指してシャンゼリゼ通りを歩いた。すると地下鉄から地上に上がってくるサラリーマンたちが吸い込まれるようにどんどん喫茶店に入っていく。

 良く見てみると、立ったまま二重、三重になってコーヒーを飲んでいる。「なぜ立って飲むのだろう」。それは料金体系にあることが分かった。立って飲むと安く、座って飲んだり、テラスでゆっくり飲んだりすると高くなる仕組みになっていたからだ。「これだ」と鳥羽氏は閃いたという。「いずれ日本にもコーヒーを立って飲む時代がやってくる」と胸に刻んだのだ。

 ドイツやスイスを視察したヨーロッパ旅行でも、鳥羽氏は3つのヒントを掴んだ。1つ目は立ち飲みの時代が来ること、2つ目はレギュラーコーヒーを挽いて店内で売ること、3つ目は店舗を清潔にして従業員が早く働きたいと思うような店舗にすること。帰国後、80年に国内初のセルフサービススタイルの「ドトールコーヒーショップ」を原宿に出店した。

 その店舗は、9坪の寿司屋だった店で、後継者は寿司店を継がずコロラドを出したいと言ってきた場所だった。鳥羽氏はヨーロッパ視察をヒントに思い描いていた喫茶店をここで始めようと後継者に相談。うまく行かなかったら買い取ることを条件に始めた。

 粉を入れたらコーヒーが出てくるドイツ製の機械を導入、食器洗いも全自動にしてコストを下げ、1杯150円程度に設定、毎日飲めるようにした。ドイツのソーセージを当時は輸入できなかったため、その味に近づけたソーセージを滝沢ハムと共同開発、ジャーマンドッグとして提供するなどした。

 その後、ドトールコーヒーショップのフランチャイズチェーンを展開、「うまくいかないチェーン店があると本部が買い取り、うまくいっている本部の店を代わりに任せたりしている。人の不幸を作らないのがドトールチェーンだ」と鳥羽氏は講演を締めくくった。
 2017年7月現在でドトールグループの店舗数は国内1347店舗、北海道には札幌市内11店舗を含む24店舗が営業している。(終わり)



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