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 「北のミュージアム散歩」は、道新文化センターのノンフィクション作家を育成する「一道塾」(主宰・合田一道)の塾生が書いた作品を連載するものです。道内にある博物館、郷土歴史館、資料館などを回り、ミュージアムの特色を紹介しながら、ミュージアムの魅力やその存在する意味を問いかけます。
 第76回は、帯広市の「帯広百年記念館」です。ぜひご愛読ください。

(合田一道)

■第76回 帯広百年記念館
-十勝の歴史をダイナミックにたどろう-


帯広百年記念館全景

 帯広といえば、広大な牧草地、大規模な畑作風景を思い浮かべる人も多いだろう。だがそんな帯広も150年前は、原始林が広がる未開の原野だった。北海道の他の開拓地と同じように、帯広を始めとする十勝地方に移住してきた多くの開拓民の苦労と努力の上に現在の豊かな暮らしがある。帯広百年記念館は、帯広最初の開拓団体が初めてこの地に鍬をおろしてから100年目の昭和57年(1982年)に開館した総合博物館である。常設展では、十勝の開拓の歴史と自然が豊富な資料を元に紹介されている。
 常設展は5つのテーマに沿って展示されている。①開拓の夜明けと発展、②十勝の自然、③十勝平野の生い立ちと先住の人々、④十勝のくらし、⑤十勝・農業王国の確立である。特に十勝開拓の先駆けとなった晩成社の資料とアイヌ文化、十勝農業の展示が充実している。

 館内に入るとすぐに、巨大なマンモスの像が目を引く。今から4万5千年〜2万年前の氷河期には、北海道とサハリン、シベリア大陸が陸続きになっていた。北海道ではマンモスの化石が発見されており、この陸の橋を渡ってマンモスが北海道にやってきたと考えられている。さらにこの頃の人類がマンモスを追って日本にやってきたと推定されている。ここでは十勝の湿地に落ちてもがいているマンモスのレプリカが再現されている。そしてマンモスと共存していたかもしれない旧石器時代や、縄文時代の遺跡も展示されている。


エントランスの迫力あるマンモス像

 12〜13世紀頃、擦文文化からアイヌ文化の時代へ移り変わった。「十勝のアイヌ文化」の展示では、先住民族アイヌの暮らしが紹介されている。アットゥシ(樹皮服)やチェプケリ(鮭皮製の靴)、1/2スケールのイタオマチプ(板綴り舟)の展示がある。


十勝のアイヌ民族が使っていた舟のレプリカ

 明治時代、国の政策として北海道開拓が奨励され多くの移民が十勝へやってきた。その先駆けとなったのが晩成社である。晩成社とは、静岡出身の依田勉三が率いた民間開拓団で、オベリベリ(今の帯広)を最初に開拓した。慣れない寒い土地での開拓には冷害や水害、バッタの大量発生による蝗害など苦難の連続であったという。その中で依田たちは、酪農や牛肉販売、バター作りなど様々なことに挑戦した。事業のほとんどが挫折し、後に晩成社は解散したが、その物語は今も語り継がれている。館内にはそうした晩成社のメンバーの写真や手紙、製品など豊富な資料が展示されている。晩成社の作ったバターのラベルも展示されているが、そのデザインは、現在、帯広に本店のある北海道の有名な菓子メーカー「六花亭」のマルセイバターサンドの包装紙に使われている。六花亭は、他にも「ひとつ鍋」など晩成社にちなんだ菓子を作っている。
 晩成社以降、多くの地域からの移民が十勝に入植した。その頃、建設された十勝監獄も道路の建設やこの地域の発展に大きな役割を果たした。


晩成社の作ったバターのラベル

 開拓当初は、人力による開墾、耕作が行われていたが、次第に馬による耕作が導入され、農耕具も改良されていった。昭和35年以降からトラクターの普及により、大規模機械化農業に移行した。時代ごとの農業の変遷が、実際に使われた器具や機械の展示を通して見ることができる。十勝で生産される様々な種類の豆が壁面一面に展示されている様は圧巻。こんなに多くの豆の種類があったのかと驚かされる。
 十勝では、豆、とうもろこし、甜菜、イモなどが多く栽培され、畜産も広く普及した。現在では、十勝地方の食料自給率は1,100%と全国的にも圧倒的な割合を誇り、十勝は農業王国と呼ばれる。そんな十勝の歴史をここでわかりやすく学ぶことができる。


十勝の風景と農耕具

利用案内
所 在 地:帯広市緑ヶ丘2
電  話:0155-24-5352
開館時間:9:00~17:00(入場は16:30まで)
休 館 日:月曜日(祝日は開館)、祝日の翌日、年末年始
観 覧 料:大人:380円、高校生190円、小・中学生:無料
交通機関:帯広駅南口より徒歩約30分、タクシーで約10分

付近の見どころ
六花の森
 晩成社とも縁のある六花亭が運営する庭園。六花亭の包装紙のデザインを手掛けた坂本直行氏の作品を展示した記念館や自然環境に調和した庭園があり、歩いているだけで癒やされる。ミュージアムショップ、レストランも併設されている。

文・写真:藤森 祐子

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