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北海道リアルエコノミー

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 「北のミュージアム散歩」は、道新文化センターのノンフィクション作家を育成する「一道塾」(主宰・合田一道)の塾生が書いた作品を連載するものです。道内にある博物館、郷土歴史館、資料館などを回り、ミュージアムの特色を紹介しながら、ミュージアムの魅力やその存在する意味を問いかけます。
 第59回は、札幌市の「札幌市資料館」です。ぜひご愛読ください。

(合田一道)

■第59回 札幌市資料館
-法と文化を伝える大正の面影-


札幌市資料館(外観)

 札幌市大通公園西13丁目の敷地に、古風な建築物がある。札幌市資料館である。大正15年(1926年)9月に札幌控訴院として誕生した。
 昭和48年頃まで裁判が行われ、その後は歴史資料の保存や展示、各種イベントなどに活用されている。
 控訴院とは現代の高等裁判所の前身といえる。明治の頃、控訴院は全国に8ヶ所あり、道内は函館に設置されていた。後々、樺太が管轄に入ると札幌への移転問題が生じたが、大正時代になっても解決せず、旭川も建設へ名乗りを上げたことにより、札幌、函館、旭川を含む誘致競合が激しくなった。最終的には検事長と控訴院長の意見書により札幌が選ばれた。
 建築工事が開始されるが、財政状況による予算の削減や、関東大震災の影響で資材不足し困難な状況に陥る。そんな中、設計変更を施し、工事も遅れながらやっと完成させた。

 正面玄関を見上げると、目隠しをした法の女神の彫刻と、真実を照らす鏡が左右に彫り込まれ、厳格な趣きを感じさせる。
 1階の『まちの歴史展示室』には、主に札幌の文化と自然環境に関する資料や模型が展示されている。蝦夷地が北海道と改称された明治2年、開拓使が設置され、開拓の拠点として本府が札幌に置かれた。街づくりに貢献した島義勇と岩村通俊の功績も紹介している。
 大通公園テーブルと記された横長の机上に西1丁目から西13丁目のそれぞれの公園の見所やイベント情報などを伝える資料が置いてあり、持ち帰ることもできる。ケヤキやハルニレに囲まれた西9丁目の公園は特に開放的だ。この辺りは昔、原生林が茂り湧き水のでる環境だったそうだ。遠方からは森がクジラの姿に見え、クジラの森と呼ばれた。そうした歴史の片片が随所に読み取れる。


札幌市資料館・館内光景~まちの展示室~

 北海道遺産認定の札幌軟石の切り出し模型と、煙草の空箱(2200個)を材料として制作された資料館模型が展示されている。何れも手の込んだ作品である。街に関するDVD放映(日により内容が異なる)も観賞できる。
 奥に『刑事法廷展示室』がある。入り口前に北海道の裁判所史として、明治5年から平成6年までの裁判所の変遷と社会の動きが記載されている。
 扉を開けると、札幌控訴院として落成した頃の刑事法廷が復元されており、判事席を中心に、書記と検事の席が置かれている。判事の貫禄のある椅子に腰かける事もできる。角隅のケースに、法服と帽子が展示されている。検事と弁護士が着用していたもので、胸飾りの色と刺繍により区分されていたことがわかる。


札幌市資料館・館内光景~刑事法廷展示室~

 一段降りると、証人、被告人、弁護人などの席があり、後方には新聞記者の席が並ぶ。ここから全体を見渡すと、厳粛な雰囲気を味わえる。
 二階の旧応接室には『写真で見る資料館の今昔』と示した26枚の写真が展示されている。落成時から平成10年までの撮影記録であり、なかでも「カッコーの森」と呼ばれる裏庭に咲くタンポポ(昭和56年撮影)と、館前に停車中のロンドンタクシー(昭和63年撮影)は、ひと際印象深く、絵葉書のような光景である。
 法の伝統が凝縮されたこの資料館は、落成から92年後の平成30年に札幌市有形文化財に指定された。貴重な文化とともに、大正の香りを今も留めている。

利用案内
所 在 地:札幌市中央区大通西13丁目
T E L:011-251-0731
開 館 時 間:9時~19時 休館日:月・年末年始
入 館 料:無料

付近の見どころ:
 北海道知事公館(旧三井クラブ)
 昭和11年に建築された北海道知事の宿舎。イギリス建築様式の建物で、庭園内に水路が伸びている。多彩な木々に囲まれた広大な敷地を散歩する人も多い。

文・写真 雪乃林太郎

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