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北海道リアルエコノミー

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 「北のミュージアム散歩」は、道新文化センターのノンフィクション作家を育成する「一道塾」(主宰・合田一道)の塾生が書いた作品を連載するものです。道内にある博物館、郷土歴史館、資料館などを回り、ミュージアムの特色を紹介しながら、ミュージアムの魅力やその存在する意味を問いかけます。
 第47回は、札幌市の「平岸郷土史料館」です。ぜひご愛読ください。

(合田一道)

■第47回 平岸郷土史料館 ~平岸の文化を支えた紅い果実~


平岸郷土館・外観

 札幌環状線沿いの豊平区平岸3条9丁目に、札幌市平岸児童会館に併設された平岸郷土史料館がある。地下鉄南北線「南平岸駅」から徒歩10分ほどで着く。来館の対応は児童会館の職員がしてくれる。
 史料室は奥行きがあり、教室のような趣がある。主に郷土の生活を支えた道工具と、りんごに関する展示物が多いのが特徴的だ。

 明治4年5月、仙台藩水沢領の人々が平岸の地に入植したとされる。床にむしろを敷き、木の皮で覆われた掘立小屋に住み、大木を切り倒し根を掘り起こす等、村民が共同で作業を進める様子をイラストで紹介している。また、ロシア型といわれる馬そりと車輪の実物や、開墾作業で活躍するドサンコ(道産子)の写真が展示されている。当時の、人馬一体ともいえる生活模様を改めて知る。
 明治20年頃の平岸地区では、農耕運搬としてドサンコを飼育する家が次第に増えた。冬になると馬車、馬そりによる木材運搬が多くなり、平岸街道(平岸への入植者に設けられた道)に大きな影響をもたらす。人馬が往来する街道沿いには商店が立ち並び賑やかな交流の場となる。


平岸郷土館・館内光景

 家庭生活の道具・家具の展示場には、火鉢やこたつやぐら(いろりで使用)、木皿に木へら、水おけ、そして衣類の展示があり、腰をかけて観賞できる。

 平岸の歴史を辿ると、りんご園の歩みを改めて知ることができる。発端は、開拓使顧問ケプロンの進言による。彼によると「りんごは果樹園中、最も美しいもので、この樹は露国の寒地にも又、南部の温帯にもよく成長するものである。ゆえに日本全土にこれを植えることができる」とのことで、開拓使が米国から果樹類の苗木を輸入し、平岸村には52種類の苗木が配布された。
 明治8年に苗木の栽植が行われる。とはいえ、経験の浅い当初は枯らしてしまうことも多々あり、害虫を防ぐための袋掛けなどの工夫を施し、試行錯誤を重ねた。
 やがて紅い果実が実る。明治18年頃には先駆的な果樹園が生まれ、本格的な栽植が広がりを見せる。この地で栽培された『平岸りんご』は特産品として名を馳せた。
 大正から昭和初期には海外への売り込みにも成功した。世間の関心を高め、この地区においても、経済の底上げになったことは相違ないだろう。


平岸郷土館・館内光景

 室内の奥にあるりんごコーナーには、果樹園の作業を描いた栽培図がある。
 家族総出で熟した果実をもぎ、選別、箱詰、出荷をしている絵図を眺めると、大人と一緒に働く子供たちの喜々とした姿や、その頃の果樹園を彩る美しい情景を彷彿とさせる。さらに、病害虫や台風による被害状況、戦時中の肥料不足や人手不足による困難を乗り越えてきた歴史を示す写真も見える。
 昭和20年代になると、平岸の暮らしに変化がみえ始める。果樹畑から住宅地へ、時代の変貌の波が押し寄せる。市の開発に伴い果樹園農家が減少し、りんごの消毒に欠かせない平岸街道の用水路も埋め立てられた。地下鉄の整備が進んだことも農家減少の一つの要因となった。

 現代、広大な果樹園は見あたらない。それでもりんご文化の名残りを確認できる場所がある。環状線の中央分離帯に植えられた『りんご並木』である。当時の札幌市長の提案により造成されたりんご並木(幅6メートル・1.1キロ区間)には、茜や津軽、北上、レッドゴールドなどの品種が植えられている。収穫されたリンゴは豊平区で行われる各イベントに配布される。
 その他に、天神山で出土された縄文時代前期の土器や石器に、開拓当時の文献が展示されている。筆で和紙に書きしるされた文献を読みながら、郷土文化の変動を学べることは、貴重な体験といえよう。

利用案内
所在地:札幌市豊平区平岸3条9丁目
TEL:011-812-2493
開館時間:8:45~18:00
休館日:日曜 祝日 年始年末
入場料:無料

付近の見どころ:
漢方資料館『草木庵(そうもくあん)』
動植物に鉱物由来の650種、2500点もの生薬の標本が展示され、無料で見学できる。
その他に、医心方などの書籍が多数ある。
見学は事前に連絡が必要。
所在地:札幌市豊平区平岸2-5-2-4
TEL:011-832-7677

文・写真 雪乃林太郎

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