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北海道リアルエコノミー

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 「北のミュージアム散歩」は、道新文化センターのノンフィクション作家を育成する「一道塾」(主宰・合田一道)の塾生が書いた作品を連載するものです。道内にある博物館、郷土歴史館、資料館などを回り、ミュージアムの特色を紹介しながら、ミュージアムの魅力やその存在する意味を問いかけます。
 第33回は、ニセコ町の「有島記念館」です。ぜひご愛読ください。

(合田一道)

■第33回 有島記念館 -ニセコ町に残る有島武郎の足跡-


有島記念館の外観

 虻田郡ニセコ町のJRニセコ駅から車で約10分のところに、白樺派を代表する小説家有島武郎(ありしま たけお)の足跡を後世に伝える有島記念館がある。ここを訪れると、先ず、羊蹄山をバックに絶妙のコンセプトで建てられた白亜の記念館に目を奪われる思いがした。広々とした緑あふれる庭に立つ有島武郎像と「カインの末裔」の文学碑も、この風景によくマッチしていた。


記念館構内に立つ有島武郎像

 記念館は、元々は旧有島農場事務所に武郎や彼の所有していた農場についての資料が展示保存されていたものだった。しかし昭和32年(1957)、火災により焼失したので、「有島謝恩会」が中心となって6年後に再建、さらに昭和55年(1980)、ニセコ町の手で建て替えられている。

 正面玄関から入ると、右側に「有島武郎の世界」と書かれた常設展示コーナーがあり、左側にはビデオ上映室、売店、喫茶ルーム、特別展示コーナー、スイス風の展望塔がある。著者は先ず係員のアドバイスに従い、ビデオ上映室で有島武郎の生涯についてまとめた映像を10分ほど鑑賞してから、常設展示コーナーに入った。
 最初に目についたのは、有島武郎と弟の有島生馬(ありしま いくま)(作家・画家)、里見弴(さとみとん)(作家)の三兄弟が一緒に写った一枚の写真で、三人が仲睦ましい関係だったことが見てとれた。

 その後、ところ狭しと展示されている有島武郎の手書き原稿や著書、書簡、写真類、説明文、年表などを順次見ながら進むうちに、有島武郎が米国留学などを経て母校札幌農学校の後身東北帝国大学農科大学の教職に就いたこと、この頃から武者小路実篤らとともに『白樺』同人となり作品を発表し始めたこと、大正5年(1916)に妻安子と父武(たけし)を相次いで亡くしたのを転機に教職を辞し、『カインの末裔』、『生まれ出づる悩み』、『或る女』、『一房の葡萄』などの作品を次々と発表して文壇で地位を確立したこと、小説のほかにも童話や演劇、美術界に大きな足跡を残したことなどが、よく理解できた。

 有島農場の模型や農場で使用した農機具、開墾に関係した資料などを見ながら進むうちに、武郎が大正11年(1922)、狩太(かりぶと)(現ニセコ町)で不在地主として所有していた有島農場の土地(450ヘクタール)を解放し、小作人たちに無償譲与したこと、小作人たちは「有島共生農団信用組合」を結成して相互扶助精神のもとに営農してきたが、組合経営を経て昭和24年(1949)に農団は解散し、各個人に土地が分け与えられたことを知った。展示物の中には、武郎自身がこの農団の「団是」として書き贈ったという「相互扶助」の筆字(横書きの額入り)があり、特に印象に残った。

 農場解放の翌年(大正12年)、武郎は45年という短い生涯を閉じている。農民たちは、有島武郎に対する感謝の意を継承するため「有島謝恩会」を結成しており、この会は現在も存続されているという。武郎の心の中で、有島農場のあったこの地はかなり大きな存在だったようで、彼の作品の多くがここを舞台にしていた。

 常設展示コーナーを出て館の左側へ進んで行くと、売店前を抜けて特別展示コーナーに着く。ここでは、たまたま岩内町生まれの藤倉英幸の作品展が開かれており、多くの貼り絵や版画の作品が展示されていた。北海道の風景をモチーフにした独特のタッチで描かれており、どの作品も素晴らしいのひと言である。
 記念館の向かい側には、「吉川銀之丞顕彰碑」が建っており、碑文によると、武郎の意を体し有島農場の管理などに尽した島根県生まれの人物を称えたものだとわかった。


館内光景

利用案内
住  所:虻田郡ニセコ町字有島57番地
電話番号:0136-44-3245
開館時間:9時~17時(入館は16時30分まで)
休 館 日:毎週月曜日と年末年始。ただし夏期は月曜日でも開館する場合がある。
入 館 料:一般500円、高校生100円、中学生・ニセコ町在住の65歳以上の方は無料

付近の見どころ:
「北の道の駅ニセコビュープラザ」(ニセコ町字元町77番地10 電話:0136-43-2051)
国道5号と道道岩内洞爺線が交差する地点にあり、情報プラザ棟、フリースペース棟、トイレ棟に分かれている。フリースペース棟では農産物の直売を行なっているほか、特産のジャガイモを使ったコロッケ、地元のミルクを使ったソフトクリームも販売している。情報プラザではラフティング、スキーなどの観光情報を提供している。

文・写真 北国 諒星

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