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 「北のミュージアム散歩」は、道新文化センターのノンフィクション作家を育成する「一道塾」(主宰・合田一道)の塾生が書いた作品を連載するものです。道内にある博物館、郷土歴史館、資料館などを回り、ミュージアムの特色を紹介しながら、ミュージアムの魅力やその存在する意味を問いかけます。
 第26回は、札幌市の「赤れんが庁舎内のミュージアム」です。ぜひご愛読ください。

(合田一道)

■第26回 赤れんが庁舎内のミュージアム

~北海道近代史へのいざない~

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赤レンガ庁舎の外観
札幌市の都心ビジネス街の中央に位置している

 赤れんが庁舎の正式名称は「北海道庁旧本庁舎」で、現本庁舎の東側に位置する。東部アメリカで流行ったネオバロック様式で建てられたレンガ館だ。
 塔頂部までの高さは33mで、10階建てビルに相当し、当時では国内有数の大建造物であった。開拓時代の北海道を伝える象徴として、多くの観光客が訪れる‘‘札幌の顔,,でもある。1888年(明治21年)に北海道庁の本庁舎として建てられ、1969年(昭和44年)まで、80年間にわたり使用された。同年、重要文化財に指定され、1985年(昭和60年)にリニューアルした。

 赤れんが庁舎の内部は、開拓時代の資料を扱う道立文書館の他に、大きく三つのミュージアムが設置されている。一階の「文書館展示室」そして二階の「樺太関係資料館」と「赤れんが北方領土館」だ。
 正面玄関から入ると、三輪アーチが美しいホールがお目見えする。宮殿みたいな内装と廊下の真紅の絨毯から、厳かな明治時代にタイムスリップした感じに陥る。
 玄関左側にある「文書館展示室」には、「文書が語る北海道の歴史」をテーマに、幕末から明治時代の文書や記録などが、展示している。

 真っ先に目についたのは、1869年(明治2年)9月に箱舘府が庁内で回覧した布達である。「此度蝦夷地一円北海道ト称、十一州二分チ開拓使被相建…」と書かれ、これまでの蝦夷地を北海道と名称を変え、開拓使の設置を宣言した歴史的な文書だ。
 多くの資料の中には、1880年(明治13年)に、日本で3番目の鉄道として開業した幌内炭鉱鐡道開業時の時刻表や乗車券が並んでいる。
 壁一面に貼られている「東西蝦夷山川地理取調図」には圧倒された。1856年(安政3年)に、松浦武四郎が先人たちの資料を参考に作り上げた蝦夷地の地図である。当時の地名や内陸部も詳細に描かれ、現在の北海道の地図と見比べてみるのも面白い。
 展示室の真ん中に、1873年(明治6年)の札幌本府の街を千二百分の一にした縮尺模型がある。開拓時代初期の札幌の建物の配置や街並みが一見して理解できる。

 二階の南側に「樺太関係資料館」がある。1905年(明治38年)から1945年(昭和20年)まで、日本領であった南樺太に関する40年間の資料を紹介している。
 日本と関わりが始まった17世紀からのサハリン島の歴史、南樺太の産業や文化と生活の紹介、太平洋戦争末期のソ連参戦と戦後の樺太引揚者の労苦、今のサハリンと北海道の交流と四つのテーマに分け、模型や写真で展示している。
 特に、ソ連軍上陸後に女性電話交換手9人が集団自決した「真岡郵便電信局事件」や樺太からの引揚船3隻が留萌沖でソ連潜水艦の攻撃を受け、1708人の民間人が犠牲となった「三船遭難事件」には、複雑な思いにかられた。

 「赤れんが北方領土館」は、ロシアに不当占拠された北方領土問題を国内外にアピールする啓蒙施設だ。日本語以外に多国語でも解かりやすく説明している。なかでも衛星写真を利用した北方四島の3Dジオラマ模型は、見応えがある。返還要求署名コーナーもあった。
 廊下には、本道出身の画家が描いた絵画20点が飾っている。広く知られた絵のなかでも、クラーク博士との別れを描いた田中忠雄の洋画「島松の別離」と岩橋英遠の日本画「阿寒湖畔の松浦武四郎」は、記憶に残った。

 最後に、二階中央の記念室に足を運ぶ。歴代の北海道庁長官や知事の執務室で、威厳のある業務机の上には、昭和10年代の大きな地球儀が置いてあった。この地球儀を見つめながら、世界の中の北海道を思索していたのだろうか?
 唐草模様に縁取られた部屋の窓から外を望むと、一面に超高層オフィスビルが整然と広がり、過去と現在の札幌を同時に体感する気分に浸れた。赤レンガ庁舎は、明治時代からそしてこれからも、札幌を見続けていく。

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文書館展示室内部
中央のガラス板内に札幌本府の模型があり、右側に当時の旧開拓使札幌本庁舎の模型も見える
左後方に「東西山川蝦夷取調図」が貼ってある

利用案内
場  所:札幌市中央区北3条西6丁目
電  話:011-204-5019(平日)/ 011-204-5000(土日祝)
開館時間:午前8時45分~午後6時
入 館 料:無料
休 館 日:年末年始

付近の見どころ:
赤レンガ庁舎の北隣に、旧開拓使札幌本庁舎跡がある。1873年(明治6年)に、お雇い外国人ケプロンの構想に基づき建てられた。築後5年目に火災で焼失する。

文・写真 河原崎 暢

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