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 「北のミュージアム散歩」は、道新文化センターのノンフィクション作家を育成する「一道塾」(主宰・合田一道)の塾生が書いた作品を連載するものです。道内にある博物館、郷土歴史館、資料館などを回り、ミュージアムの特色を紹介しながら、ミュージアムの魅力やその存在する意味を問いかけます。
 第21回は、美深町の「チョウザメ館」です。ぜひご愛読ください。

(合田一道)

■第21回 「チョウザメ館」―松浦武四郎も驚いた!美深産キャビアの味は・・・―

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チョウザメ館外観

 国道40号線を美深市街から約10km北へ進むと、びふかアイランドに到着する。
 ここは道の駅、びふか温泉、キャンプ場とコテージ、パークゴルフ場、テニスコートが併設する雄大なスケールの森林公園だ。その敷地の一角、三日月湖の傍らに建つ、中世ヨーロッパを連想させる素敵な建物がチョウザメ館だ。

 この館は美深町が、チョウザメを町の特産品にするべく開発を進める目的で、1997年4月26日にオープンした。館内では、約2400匹のチョウザメが飼育されており、人口交配種の養殖事業も行っている。
 入館するとすぐにミカドチョウザメのはく製が展示されている。爬虫類と見まがう姿は2億年前からほとんど変わらず、とがった口先と甲羅のような鱗はとても硬そう。生きた化石と言われているのも納得できる。

 受付の横にある床から天井までの大きな展示水槽には、6種類のチョウザメが飼育されている。鼻先の鋭いべステルス種、身幅があり大型のシロチョウザメ、斑紋が鮮やかなホシチョウザメ、鼻先の丸いロシアチョウザメ、シベリアチョウザメ、コチョウザメで大きいものは体長2メートル以上はありそうだ。寿命は50~100年と長寿である。
 天塩川に生息する魚たちを紹介する水槽には、幻の魚イトウをはじめ、ウグイ、イワナなどが泳いでいる。その奥に飼育展示室がある。

 ここには稚魚から1年魚、2年魚3年魚と水槽を分別して飼育されている。2年魚を水槽の上からのぞき込むと鋭くとがった口先を立てて近寄ってくる。好奇心旺盛なのだろうか.まるで水面を切り裂くのこぎりのような姿は攻撃的に見えてひやりとする。動きが素早く、間近でジャンプされて水をかぶってしまい、思わず悲鳴が出る。噛みつかれはしないかと心配になるが、実はチョウザメには歯が無い。飼育体験では、手づかみもできる。

  説明文によると、そもそも海のギャングのサメとは全く異なる種類なのだ。チョウザメは硬骨魚類に属し、タイ、サケ、マグロの仲間。サメは軟骨魚類でエイなどと同種。日本と韓国だけが名前に鮫という文字を使っているが、英名はスタージョンというそうだ。
 採卵の工程を解説するコーナーでは、麻酔をかけて腹を開き卵巣を摘出したのち縫合する様子が、写真で紹介されている。メスは採卵できるまでに10年、オスは採精迄に5年かかる。1~3年ごとに採卵し、魚体10キロで8~11万粒が採れる。キャビアが出来上がるまで長い年月と手間がかかるのだ。

 ところで、世界三大珍味といわれるキャビアがどうして美深に、と不思議に思うが実は160年前、1857年に探検家の松浦武四郎が、天塩川をさかのぼった時、チョウザメが群れを成して武四郎の舟を取り巻いたと、「天塩日誌」に記されている。この気味の悪い魚が、中国ではフカヒレとして、ロシアでは宮廷料理に供されていたとは誰も知らなかっただろう。
 明治に入りチョウザメの魚肉が、滋養強壮の貴重なタンパク源として食べられていたが、開拓とともに河川環境が変化し、天塩川のチョウザメは絶滅した。1980年から、日ソ漁業科学技術協力の一環として人工ふ化が行われ、3年後に三日月湖に300匹のチョウザメが放流された。ここから美深町のチョウザメ養殖が始まった。

 2016年度は15,524人が来場し、チョウザメの生態がよくわかる日本で珍しい飼育展示館と評判だ。商品化が待ち遠しいが、現在はびふかアイランド内にあるびふか温泉でのみ、チョウザメ料理が供されている。キャビアをお目当ての観光客に大人気で、1週間前の予約が必要。

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大型水槽で泳ぐチョウザメの成魚

利用案内
所 在 地:中川郡美深町字紋穂内139番地
交  通:JR美深駅から名士バス恩根内行き乗車15分 びふか温泉前下車 徒歩1分
開館時間:9:00~17:00 毎週月曜日休館 祝日の場合は火曜日休館
入 館 料:無料

付近の見どころ
 文化会館COM100郷土資料室
 1998年、美深町字西町22番地に生涯学習拠点として建てられた総合施設。映画や音楽会が開催される文化ホールの一角に郷土資料室がある。
 美深町の郷土紹介、農業の歴史、開拓時代からの歴史的資料が展示されている。入場料無料 年末年始休み

文・写真 渋谷 真希

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