新司法試験の導入に伴って増え続ける弁護士の働き口を見つけるのは容易ではないが、多重債務や過払い債務の整理に続いて大きな市場が見込めるとして弁護士が注目しているのが企業の時間外労働の分野。かつては工場労働者などブルーワーカーの領域で時間外労働の未払い問題が多かったが、最近はサービス業やオフィス勤務者にもこの問題が増えてきている。時間外労働の係争は、弁護士の新たな働き口としてクローズアップされている。(写真は、札幌弁護士会が入居しているビル)
 

  実際に労働基準法に違反した時間外労働を強いられた従業員の弁護に取り組んだことのある弁護士によると、裁判の結果ほぼ1年分の年収相当額が時間外労働の対価として認められたという。
 
 その弁護士によると、「多くの労働現場では、サービス残業という名の下で時間外労働が日常的に行われている。そうした慣行が長年続いている企業を相手に裁判を起こすと、少なく見積もっても年収の80~100%が認められるケースが多い。場合によっては年収の1・2~1・3倍にもなることがある」と言う。
 
 実際の裁判例の中には、年収500万円前後の従業員が裁判を起こし、時間外労働の対価として900万円を勝ち取ったこともあったという。
 企業にとって、こうした隠れ負債とも言える未払い金は財務に大きなマイナスの影響を与える。適正な労働管理が行われていない企業がこの問題を放置していると、裁判になった際には敗訴する確率は高い。
 
 前出の弁護士は、「時間外労働が裁判所から認定されると、場合によったら『従業員数×年収分』を純利益の中から支払わなければならなくなる。企業の真水の部分から抜けていくことを覚悟しなければならず、存続の危機に直面する企業も出てくるのではないか」と指摘する。
 
 労働現場では、多かれ少なかれ時間外労働の問題はあるが、今まではなかなか顕在化してこなかったのも事実。しかし、働く意識が大きく変わってきたことで徐々に裁判に持ち込まれることも増えてきた。弁護士の新たな活躍の舞台になりそうだ。


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