JR北海道の路線縮小問題や道内7空港の一括民営化など北海道経済の将来問題について、ご意見番的存在である北海道大学公共政策大学の石井吉春特任教授(64)。その石井氏が倶知安町と室蘭市に苦言を呈した。IMG_8658(写真は、コンドミニアムの建設ラッシュが続く倶知安町山田地区)

 苦言が飛び出したのは、20日に開催された「北海道創生シンポジウム」。中央官庁から道内自治体に派遣されているキャリア官僚たちの報告会でのことだった。石井氏は、報告を聞いてコメントする講師として参加していた。

 まず、倶知安町について。言わずと知れた海外観光客が押し寄せるリゾート地として知られ、コンドミニアムや世界的ホテルの建設が目白押しで地価上昇率は全国ナンバーワン。まだまだ投資は続きそうだが、石井氏は町の方向性についてこう話した。

「私はよく倶知安に行っていたが最近は足が遠のいている。その原因は物価が高くなってしまったこと。土地高騰によるコストプッシュインフレになっているのではないか。このままでは、人が住むための地域づくりが難しくなる。20~30年後にはスラム化しかねないリスクがある。もう少し継続性のある仕組みをそろそろ考えないといけない」とピシャリと断じた。

 さらに、室蘭市についてもこう語った。「室蘭市はもっと住んでもらう取り組みを強めないといけない。人口減少が続いているのは非経済要因だ。住んでもらうような対応策が足りない。そのことに力点を置くべきだ」

 ソフトな語り口で、相手の感情を刺激するような物言いはしない石井氏だが、ごくたまに内に秘めたパッションが顔を出してくる時がある。この日がそうだったようだ。倶知安町と室蘭市の首長はこのシンポジウムには参加していなかったようだが、両自治体に派遣されているキャリア官僚たちは、両首長にどう進言しただろうか。ともあれ、この石井発言、意外に地方創生の核心を衝いているのかもしれない。


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