取材をせずに虚偽のことを書かれて名誉を毀損されたとして書籍を書いた道新記者2人と道新、本を出版した 旬報社、講談社に損害賠償請求している道警元総務部長の佐々木友善氏(67)が、新たに道新記者1人を偽証罪で札幌地検特別刑事部に告発した。民事訴訟の証人尋問で虚偽の答弁をしたと訴えたもの。民事訴訟では一審、二審ともに佐々木氏が勝訴したが原告、被告双方が最高裁に上告中。偽証罪の告発で道新は一段と苦しい立場に追い込まれた。(写真は道新2003年12月31日付け27面の紙面)

 

佐々木氏が告発したのは5月23日。民事の札幌高裁判決で勝訴したことを受けて、佐々木氏は昨年11月ころから刑事告発を準備、札幌地検に不備や不足部分の指摘を受け告発状の要件を整えて提出した。

 

告発状によると、道新記者の中原洋之輔氏(現美幌支局長)は、佐々木氏が提訴した民事訴訟の口頭弁論(2008年7月14日開廷の第10回)で証人として出廷、虚偽の答弁をしたというもの。

 

具体的に3点を挙げている。①〈―この答弁を聞いた瞬間、取材班の一人は、3ヶ月ほど前の疑惑発覚直後のことを思い出していた。そのとき、佐々木総務部長は、記者を身内とでも思ったのか、こう語ったのである。『わかるでしょ。理解してよ』〉と書籍に書かれている部分について、中原氏は道警キャップ懇親会で聞いたと証言したこと②当時の芦刈道警本部長が「僕ももう終わりかなと思った」と語ったということをキャップ懇親会で聞いたと証言したこと③〈その後、4月中旬になって、佐々木氏は道警本部庁舎内で偶然出会った取材班の記者に、こんな言葉をかけてきた。『いやいやいや、いったい、どこまでやられるかと思ったよ』〉と書籍に書かれている部分について、トイレの中で佐々木氏から聞いたと証言したこと――の3点。

 

民事訴訟の地裁、高裁判決では、書籍に記載された①の部分を名誉毀損に当たると認定している。③については名誉毀損とは認定されなかったが勝訴した佐々木氏は、この部分について不服として上告しており、現在最高裁第一小法廷に上がっている。

 

②については、民事訴訟の対象にはなっていないが、道新の03年12月31日付け27面に『揺れる道警 漏れる本音』と題した囲み記事の中で〈最高幹部 ぼくも終わりかな〉と記載されている。

 

偽証罪の行方によっては、これまで道新取材班の著作「追及・北海道警『裏金』疑惑」(講談社文庫)と同班らの共著「警察幹部を逮捕せよ!泥沼の裏金作り」(旬報社)についてのみ争われていた道新の道警キャンペーン報道の虚偽部分が新聞本体にも及んでくる可能性がある。

 

なお、民事訴訟で被告の立場にある道新記者2人のうち、当時道警担当のキャップを務めていた高田昌幸氏が最高裁の結果が出ていない中で、6月中にも道新を自主退社するという。佐々木氏が裁判の過程で行われた中原記者の証言を偽証として告発したことで、高田氏の退社にどういう影響を与えるのか関心が高まっている。

 

偽証罪は、刑法169条で虚偽の陳述をした場合は3ヵ月以上、10年以下の懲役に処すと規定されており、同170条には、裁判確定前に自白したときは刑を減免、または免除することができるとある。新聞記者が、偽証罪で告発されるのは珍しいという。

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