キャリアバンクやエコミック、SATO社会保険労務士法人などSATOグループが10月31日に開いたオープンセミナーで講演した札幌新陽高校の荒井優(ゆたか)校長(42)。2016年2月に就任して以降、ベンチャーマインドを活かした改革を進めてきた。後半は、改革の具体例が話の中心になった。IMG_8976(写真は、講演する荒井優・札幌新陽高校校長)

 17年4月に入学した1年生は322人。荒井優校長は、さっそく行動する。「1年生全員でYOSAKOIソーラン祭りに出場しよう」。職員会議に諮ると反対の声が相次いだ。「祭りは6月半ば。2ヵ月で踊りを覚えられるわけがない」、「2年生になってからでも十分ではないか」――そんな声を押し切って優氏は「まずやってみよう。新しい新陽高校の伝統を創ることにチャレンジしよう」と反対する先生たちを説得した。

 優氏自身、早大2年の時、YOSAKOIソーラン祭り実行委員長を務め、全国展開のきっかけを作ったことがある。馴染み深いこの祭りに新陽高校の生徒たちを参加させたい思いも強かった。祭りに参加するチームの定員は150人と決められていたが、このルールを改正してもらい322人全員が参加できるようにしてもらった。
 
 多くの市民や観光客が見守る晴れ舞台で、1年生たちは踊り切った。笑顔が溢れ、誇らしげな顔つき。「これを新1年生の恒例行事にしよう」。優氏はその時誓った。高校生の1学年全員がYOSAKOIソーラン祭りに参加することなど前代未聞。踊りを見ていた北海道教育委員会の委員は「これぞ体育祭の原点」と称賛したという。

 改革は続く。アウトドア用品のメーカーでアウトドアライフを提案するスノーピーク(本社・新潟県三条市)と提携、来年から野外で教科書を使わない授業を取り入れる。「普通の授業の時間割で進め、学校そのものを再定義するような内容にしたい」と優氏は語る。

 また、プロバスケットボールチームのレバンガ北海道とのコラボも始まった。優氏がレバンガの折茂武彦選手兼オーナーに直談判。レバンガの選手が新陽高校バスケットボール部の外部コーチとして指導する代わりに、部員がレバンガの試合でモッパー(コートにモップを掛ける役目)を務めることになった。モッパー役は6人、彼らは自分たちで考えた「新陽ソーラン」を踊りながら規定通りコートを拭いていく。
 最初は1試合だけということだったが、この試合を視察していたBリーグ会長がモッパーたちの動きを見て称賛。今シーズンのホーム試合はすべて新陽高校バスケ部がモッパーを務めることになった。

 入学金にも大ナタを振るうことにした。「高校の学費は道や市の補助があるため月5000円弱で済む。しかし入学金は25万円。この額はひとり親の家庭などでは負担が大きい。オープンスクールに2回参加してもらうと入学金25万円を払わなくても良いようにした」と優氏。学校の財政には響くが、「これがマーケットのニーズ」と決断した。

 さらに来年4月から国内初の「探求コース」を導入する。偏差値ではなく経験値を重視する、新しい価値感の学校を創るための先導役となるコースで、人間関係の質を高めることに重点を置く。このため、スぺインでプロサッカー選手を経験して奈良市で教師をしていた中原健聡氏(30)を「校長の右腕」という役職で招聘した。

 優氏は言う。「探求コースはこれからの日本の教育のデファクトスタンダード(事実上の標準)になるだろう。こうしたコースを設置するのに公立高校なら10年はかかる。ソフトバンク時代に培ったベンチャーマインドで教育分野に民のチャレンジシップをどんどん導入したい」
 42歳、「覚悟をもって校長になった」優氏は、新陽高校をどう新しく創り上げていくだろうか。(この稿、終わり)


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