北洋銀行は北海道大学との包括連携事業の一環として市民医療セミナーを定期開催しているが、その第2回セミナーが29日、北洋大通センター4階のセミナーホールで行われた。NTT東日本札幌病院内科診療部長・糖尿病内分泌内科部長の吉岡成人氏が「糖尿病の診断と治療に関するトピックス」をテーマに講演、約100人が耳を傾けた。(写真は、講演する吉岡成人氏)
 
 糖尿病は1型と2型に分かれるが圧倒的に多いのが膵臓から出される消化液、インスリンの分泌低下を主体にする2型。1997年には糖尿病患者数は予備軍を含めると1370万人だったが、2007年にはその数が2210万人と1・7倍に増えている。
 
 吉岡氏は、「日本人は2型が少なかったが、70年代後半から急速に増え始めた。エネルギー摂取量はそれほど変わらないが、動物性脂質と果糖を取ることが増えてきたことと自動車保有による運動不足が2型糖尿病の増えている要因」と指摘。マクドナルドやケンタッキーフライドチキンなど、70年代後半になってファストフードの普及で、いつでも、どこでも好きなものを食べられるように食生活が変わってから糖尿病が国民病とも言えるほどになってきたという。
 
「日本は、今や糖尿病列島。成人全体の3人に1人は糖尿病または予備軍で、1000人の糖尿病患者のうち1年間で10人が心筋梗塞や狭心症を引き起こしている」と語った。
 
 糖尿病は症状が出ない生活習慣病のため、患者や予備軍の3割程度が3~5年で治療を中断してしまうという。「通院しても、しなくても同じと思ってしまうのが治療中断の原因だが、中断してしまうと5~10年で透析を受けなければならなくなる。私が診断している患者で30年間定期的に治療している方がいるが、糖尿病網膜症による視力障害や糖尿病性腎症による人工透析を受けなくても済んでいる」と、早く見つけて早く治療すること、そして継続することが重要だと訴えた。
 
 治療法のひとつとしてカーボカウント法を紹介。食後の血糖上昇は摂取した食事のエネルギー量ではなく、主に炭水化物が影響することから、摂取した食事の炭水化物量に着目、食後の血糖値を食事前の血糖値に戻すという考え方で、食べるものに合わせてインスリンの注射量を調節して血糖コントロールを行う方法。
 
 油脂の含有量の多い食品は、エネルギーが高いが炭水化物量少なく、例えば焼肉を食べても血糖値は上がらない。また、酢の物なども血糖値は上がらない食べ物であることも紹介された。
 
 吉岡氏は、そのほかGLP―1というインクレチン製剤が食欲の抑制、インスリンの分泌促進など将来の糖尿病治療薬として期待されると述べ、「毎日ではなく月1回の注射でも効果がある」とした。
 
 講演後には、会場から「糖尿病の治療を受けているが投与されている薬の種類が減った」、「副作用はどうか」などの質問が寄せられていた。
 
 次回のセミナーは「不整脈とは何か」をテーマに北光記念病院院長の櫻井正之氏が講演する。参加問い合わせは北洋銀行法人部電話011・261・2579へ。


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