収監されていた喜連川社会復帰センター(群馬県)から仮釈放されて1ヵ月、鈴木宗男氏は6日午後4時から札幌グランドホテルで新党大地・真民主の結党記者会見を行った。政治の停滞が続く中で宗男氏のこの1ヵ月間の動きはスピーディーでダイナミックさに満ちており、政治が動く予感を感じさせるものだった。鈴木氏は結党の理念として「公正・公平な社会の実現」を第一番に上げた。民主党への不信感が頂点に達し、市民の政治への関心が薄まっている中で、市民感覚に訴える鈴木代表は、政治を取り戻したいと考えている市民、国民への共感を呼びそうだ。(写真は、会見する鈴木宗男代表)
 
 会見には、新党大地命名者の松山千春氏や新党に参加した衆議の松木謙公(道12区、当選3回)、石川知裕(道11区、同2回)、浅野貴博(道比例区、同1回)、参議の平山誠(全国比例、同1回)、横峯良郎(同、同1回)の各氏が参加。
 
 松山氏は、「訳ありの議員が集まった止まり木新党」と卑下したが、「10年間で天下を取る」と宣言、失うものがなくなった政治家たちの土俵際の強さが試される新党でもある。
 
 鈴木氏は、公正・公平な社会を築くために構造的な格差の解消を訴える。「福島原発の避難民も働きたくても職がなくて働けない若者たちも格差による弊害を受けている。私は一番大きな問題は、格差の広がりで日本国民がやる気を失っていることだと考えている。頑張っても立ち上がれない、額に汗してもどうしようもないと思っている人がいますが、私は、そういった人たちに正直に生きていけば、明日がある、人一倍頑張れば必ず希望と未来がある、このことをしっかり発信していきたい」
 
 政治の大きな役割は、明日への希望を国民一人ひとりに抱かせることだが、今の政治は優勝劣敗の格差社会を是認し地方の疲弊を置き去りにする暴走を続けている。
 
 集まった5人の国会議員と代表の鈴木氏は、政治生命の危機を身をもって感じている当事者たちであり、どの政治家よりも痛みを実体験したことが新党結成の原動力になった。
 
 痛みは受けたものしか分からず、市民・国民の「痛み」を本当に共感でき失うものが何もない政治家の結集は、言葉だけが先行する今の政治に少なからず影響を与えることは間違いないだろう。
 
 新党は、与党の立場で国会運営に参画していくとしているが、消費増税とTPPには反対の立場。
 
 鈴木氏は、「消費増税にしろ、TPPにしろ、この議論をする前に国会議員の特権や国家・地方公務員の優遇と無駄をなくすのが先ではないか」と訴える。具体的に、衆参議員定数の大幅削減や国会議員のボーナス150万円の返上、国家公務員の給与削減、地方公務員の削減などを実現し、「国民が『そこまでやっているなら我々も』という理解になっていくのが真っ当な政治だと思っている」と、国民目線で政治を動かしいく決意を披露した。
 
 政治の仕組みがおかしいと感じている国民は多い。仕組みとは、物事を筋道立てて合意を得ながら進めていく民主主義の原点でもある。唐突な政策決定やすべてを政局に絡めて政治を停滞させることは国民目線とは程遠い。
 
 3・11以降、国民の生活意識は大きく変わったが、変わらない政治風景が永田町に広がっている。このままでは、政治と国民の乖離は広がるばかりだ。
 
 政治を動かす仕組みとして注目されているのは、橋下徹大阪市長が率いる大阪維新の会。地域に立脚した市民目線で政治を動かす仕組みは、今回の新党にも共通する部分がある。鈴木氏は大阪維新の会をはじめ減税日本、日本一愛知の会など地域政党との連携にも踏み込む決意を語っている。
 
 鈴木氏や橋下氏などの言葉が、市民、国民の心に届くのは「弱者の痛み」をベースにしているからだろう。
 
 新党大地・真民主の結党が、落ちこぼれ国会議員の受け皿なのかどうか、1月末から始まる通常国会からその真価が早速試されることになる。


この記事は参考になりましたか?