IMG_0927 第1回定例道議会が19日に開会、高橋はるみ知事(60)は3期目最後の年度に当たる2014年度の道政執行方針演説を35分間にわたって行った。知事は、就任以来11年間を振り返り、「未来への種が(芽を出し)葉を広げつつある確かな手ごたえを感じている」と述べ、本道酪農の父とされる黒沢酉蔵を引用、「多くの道民と心を一つにして希望に満ちた北海道の実現に向け持てる力の限りを尽くす」と決意を語った。(写真は、第1定例道議会で2014年度道政執行方針演説をする高橋はるみ知事)
 
 知事の道政執行方針演説は、淡々とした口調の中にもこれまでの11年間の道政に対する自信が随所に散りばめられた内容になった。「食産業で一国を築くという気概でアジアの食市場を見据え、食産業立国に向けた取り組みを加速する」と述べ、農林水産業の競争力強化によって自立型経済の実現を目指すとした。
 また、知事はこれまで様々な国を訪れ、多くの人々と会う中で北海道の美しい自然環境、美味しい食べ物や水、魅力的な人々、それらのすべてが時代の求める宝であると実感したと強調。「恵まれた宝をさらに磨き上げてより具体的に形にしていくことが地域に活力をもたらし地域を元気にしていくことに繋がる」と述べ、かつてないほど大きなチャンスが北海道に巡ってきている好機を逃さず、新たな発展軌道に繋げる風を世界中から呼び込むとした。
 
 執行方針演説の最後の下りで引用したのは黒沢酉蔵。黒沢は、日本酪農の父と呼ばれ本道農業の発展に心血を注いだ1人。酪農の草創期だった大正12年に発生した関東大震災で救援物資として大量の乳製品が輸入されたことから本道酪農は重大な危機に直面。当時若き酪農家として頭角を現していた黒沢は、この危機を踏まえデンマーク農業を手本に多くの酪農家とともに後の雪印乳業に発展する北海道製酪販売組合を設立、乳製品の品質向上と販売拡大など海外の製品に負けない北海道ブランドの基礎を作ったことで知られる。
 
 黒沢は、晩年の回顧録で次の世代に向けてこんな言葉を残した。『過去、開発に携わった先人が嘗めた苦労を上回るような苦難が繰り返し本道を襲ってくるだろう。しかし、北海道は日本、東洋で一番素晴らしい素質を持つ大地だ。諸君が難局に負けずくじけず一意専心、開発の大業を成し遂げられることを期待する』
 
 知事はこの黒沢の言葉を紹介した後に、「本道が転換期を迎えているにあたり、私たち一人ひとりが先人の高い志や強い意志を思い起こし、世代を繋ぎ歴史を引き継いでいくことがなにより大切だ。この11年、多くの道民との出会いや励ましが私を奮い立たせ勇気と力を与えてもらった。私はこのことを胸に、残された任期を多くの道民と心を一つにして希望に満ちた北海道の実現に向け持てる力の限りを尽くす」と結んだ。
 
 知事は4選出馬の意向を一部経済人には伝えたとされるが、自らは明確な意思表示はしていない。3期最終年度となる執行方針演説でも4選に繋がるフレーズは盛り込まれていなかった。黒沢の功績を引用したもの当たり障りのない無難な演説の延長線上にあるように聞こえた。



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