調整運転中だった北海道電力泊原発3号機が営業運転に入ったが、高橋はるみ知事が判断材料にした道議会の産炭地振興・エネルギー問題調査特別委員会の質疑では十分に議論が深まらず、「道議会の意見を聞いた」という道の既成事実づくりのために行われたと言わざるを得ない。道、特別委の質疑は最後までかみ合わず、傍聴席を埋めた反対派の野次と怒号だけが響き渡った。特別委の掉尾となった吉井透議員(公明党、旭川市、1期)の質疑をプラス1として紹介する。(写真は終了後に傍聴席から知事や道幹部に向かって『私たちを殺す気ですか』と声を荒げる反対派)
 
吉井議員 道は5月17日に泊原発の緊急安全対策などに関する国からの説明の際、福島第一原発の事故における地震の影響や停止要請された浜岡原発と泊原発との扱いの異なる根拠の2点について国への質問が出された。これ以降、知事は先の定例道議会で我が党の質問に対して泊原発の運転再開については安全を担う国において責任のある説明をしてもらう必要がある、その説明内容などを踏まえて考え方を整理するなどと再三答弁しているが、未だ国からの回答はなされていない。
 
 その後も営業運転を巡る泊3号機の取り扱いについて、知事は定例会見などで、そういったことを体系的に整備していくことが重要だと述べている。泊原発3号機の営業運転を判断するに当たっては、この2点の質問に対する回答を踏まえて検討すべきだと考える。
 
知事 泊3号機の営業運転についてですが、道としてはこれまで原子力発電所の再稼動に関して、浜岡原発と泊発電所の扱いが異なる根拠などについて国から責任ある説明をしてもらう必要があると再三にわたって申し上げてきた。こうした中、国において調整運転中の泊3号機は、再稼動に当たらないと改めて整理されたところであり、いわゆる営業運転により稼働中の原子力発電所と同様の位置づけを示されたものと考えている。
 
 一方で、泊3号機はストレステストの2次評価の対象にされ、安全性の向上と国民、住民の方々の安心、信頼の確保のため地震、津波またこれらの複合事象などに対する安全性に関する総合的な評価がなされ、その結果について、原子力安全保安院と原子力安全委員会のダブルチェックを行い、継続運転の可否を判断することとされた。このような
ことからこれまで国に照会してきた事項については現時点ではその回答を求めることは要しないものと考えている。
 
吉井議員 知事は現在停止中の1号機、また近く点検に入る予定の2号機と現に動いているという認識の3号機を区別して考えるという答弁になっていると思うが、泊3号機は全国の原発の営業運転の先鞭をつけるか否かという局面。これまでの再稼動を判断するのと同じくらいの重みを持つ判断となる。
 
 例え現に動いていて再稼動に当たらないと国が返答した3号機であっても2点の質問に対する明確な国の説明を得るために経産大臣に質問をぶつけることがあってもいいのではないかと思う。それから営業運転の判断をしても遅くはなく、道民の安全に資するものと考える。
 
 次に周辺4町村の意向について伺う。泊原発3号機の営業運転への移行に関する周辺4町村の意向に関して確認したところ、道としては、本日の議論を踏まえて考え方を整理し国に伝える過程で4町村に確認していくとの答弁があった。それでは知事は現時点においては、これらの地元の意向についてまだ把握されていないのか。またこれら限られた4町村のみならず、今後のEPZ(緊急時計画区域)の対象範囲を拡大することも視野に入れることを考えたとき、できるだけ数多くの地域の方々の意向にも十分に把握すべきものと考える。合わせて知事の所見を伺う。
 
知事 4町村の意向について道では9日に国からの回答を受け、すみやかに地元4町村はもとより後志管内市町村に情報提供をしたところであり、今後については、本日の当委員会の議論を踏まえ、道の考え方を整理し国にお伝えしていきたいと考えている。その過程において安全協定を締結している4町村との間では、営業運転への移行が再稼動に当たるかどうか共通の認識に立つ必要があると考えている。道の考え方について4町村に確認しながら今後の対応を進める。
 
 また、後志管内の市町村の方々についても泊発電所における緊急安全対策など4町村が得ているものと同様の情報を提供をしているところであり、今後においても泊発電所に関する道の考え方などについて迅速な情報提供を行ったうえで道の考え方を国に対して説明したいと考えている。
 
吉井議員 道民への情報提供について伺う。現在泊原発問題は全国の原発の営業運転に関わる極めて重大な問題であり、また福島第一原発の事故などから多くの道民が未だ不安を抱えている。従って4町村の意向のみならず道民に対しても、北海道行政基本条例に基づき、分かりやすく丁寧な情報提供を行い、十分な理解を得る必要があると考える。 
 
 そもそも北海道行政基本条例の第4条第3項には、道は行政運営及び政策の基本的な方針などの立案に当たって、内容や必要な情報を公表し、道民の意見を求め、その意見に対する道の考え方を公表しなければならないと一歩も二歩も踏み込んだ取り組みをしていくものとしている。単なる説明や情報提供では済まされないものと考えているが知事の所見を伺いたい。
 
知事 道民への情報提供についての質問ですが、道としては北電が行った事故発生後の泊発電所における緊急安全対策の内容とともに道と地元4町村で実施した立ち入り調査の結果などについて道のホームページに掲載をし、広く道民の皆様方に情報提供を行っている。
 
 道としては今回の福島第一原発事故を受け、原子力発電所は安全性の確保が極めて重要であり、安全対策には万全を期す必要があるものと考えている。今後も必要な情報については、積極的かつすみやかな提供に努めるとともに道民の皆様のご理解を得ていく必要があるものと考えている。
 
吉井議員 報道によると知事は一日も早く回答を出したいと発言しており、回答を急ぐ理由を問われたところ、経産大臣からできる限り早く集約していただきたい旨の連絡があったこと、道としては調整運転が長く続くことは望ましいものではないと考えている、などとの答弁があった。
 
 緊急の安全対策などに関する国への質問に対して、未だ説明がなされていないこと、地元や道民の理解が十分に得られていないなど知事が営業運転再開への判断をするにあたっての条件が整っていないものと考えるが、改めて知事が回答を急ぐ理由を伺う。(傍聴席から拍手)
 
知事 国への回答についてだが、既に泊3号機の最終検査については原子力安全保安院の検査に加え、その検査結果について原子力安全委員会での確認を終えているところであり、10日夜、経済産業大臣から私に対し地元の判断は大切なのでそれを待つ、できる限り早く集約していただきたい旨の連絡があった。
 道としてはこうした中、現在の調整運転が長く続くことは、望ましいものではないことからできるだけ早期に結論を出す必要があるものと考えている。
 
吉井議員 知事は先の定例道議会などでも泊原発の運転再開について、国においてしっかりと責任ある説明をしていただく必要がある、その内容を踏まえて考え方を整理する、何よりも安全性の確保が不可欠で安全対策に万全を期す必要があるとともに信頼性を高めていくことが重要と再三述べている。
 
 福島原発の事故以来、原発に対する国民の目線は厳しさを増しており、事故に関する十分な情報公開や将来のわたる安全対策の確認について多くの道民の不安は解消されるに至っていない。泊原発3号機の営業運転に際しては、様々な課題が解決されたとは言い難い現状だと考えている。
 
 また、知事が国に示された2つの質問の回答が未だ示されていないのであり、加えて先に指摘したように、周辺市町村のみならず今後のEPZ(緊急時計画区域)の対象範囲の拡大に伴って影響を受ける広い範囲を対象にして、地域の方々からも意向を把握していくものと考える。道としてこのような中で、なぜ今泊原発3号機の営業運転再開の判断、国への回答を急がなければならないのか、いずれにしてもこれらの課題がクリアされていない中で慎重に対処すべきと考える。再度知事の所見を伺う。(傍聴席から拍手)
 
知事 泊3号機の営業運転について再度の質問だが、国においては調整運転中の泊3号機については再稼動には当たらないと改めて整理し、ストレステストについても2次評価の対象とされた。道としては原子力発電所の安全性の確保については国の一定の見解が示されたことや調整運転が長期にわたることが望ましくないことからできるだけ早期に結論を得る必要があると考えている。(傍聴席から野次)
 
吉井議員 今回の判断について道がずっと言っている2つの条件、浜岡原発との違い、それから福島第一原発の事故における地震の影響、これについて経産大臣にもう一度回答をいただくという時間を置いても良かったのではないかと私は思う。そうしてから慎重な判断をするということがあってもいいのではないかと私は思う。(傍聴席から『そうだ』の声)。3号機の運転再開について慎重に対処すべきだということを再三強く指摘して私の質問を終わる。
(傍聴席から『高橋はるみ、リコール』『高橋はるみ、辞めろ』『辞めてください、今すぐ』『私たちを殺す気ですか』)
 
 産炭地振興・エネルギー問題調査特別委員会は、16日午後2時から始まり、6時間半の空白を挟んで終了したのは午後11時30分ころだった。質疑そのものも空回り、まるでエアギターならぬエア論戦を見ているような内容だった。


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