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 「北のミュージアム散歩」は、道新文化センターのノンフィクション作家を育成する「一道塾」(主宰・合田一道)の塾生が書いた作品を連載するものです。道内にある博物館、郷土歴史館、資料館などを回り、ミュージアムの特色を紹介しながら、ミュージアムの魅力やその存在する意味を問いかけます。
 第65回は、札幌市の「北星学園創立百周年記念館」です。ぜひご愛読ください。

(合田一道)

■第65回 北星学園創立百周年記念館
-世にあって星のように輝け-


北星学園創立百周年記念館 正面

 明治の開拓期から円山の麓に開けた閑静な住宅地に、北星学園女子中学高等学校がある。ライラック色の校舎の壁に囲まれた中庭には「さっぽろ・ふるさと文化百選」や「文化庁登録有形文化財」、「札幌市都市景観賞」などに選定された、「北星学園創立百周年記念館」が建っている。一階の外壁は校舎と同じライラック色。二階と三階は、からし色。屋根、窓枠、入り口は緑色で縁取られている。歩道に描かれた星に導かれ、女学生たちがかつて「西洋館」と呼んでいた建物の入り口、薔薇の花のアーチをくぐる。ここは、米国の伝道局から派遣された女性宣教師の住居として、1926(大正15)年に建てられた。

 玄関ホール右の部屋は事務室。この建物を設計した建築家、マックス、ヒンデルの紹介がされていて、古い設計図や写真が展示されている。ヒンデルの故郷である雪深いスイスの建築様式が使われている。勾配のきつい三角の屋根、南側に設けた大きな窓、外壁に打ち付けたブリキ板など、北国の雪や寒さに対する防護がなされているという。

一階は応接間とリビング、食堂などの共有部分。天井と壁は漆喰の白。柱、腰板、ドア、引き戸や家具類は、こげ茶色で統一されている。黒光りするほど磨きあげられた床。リビングには聖書と古いオルガンが置かれている。食堂の真っ白なテーブルクロスが目にまぶしい。嘗て集会室の役目をした簡素で清潔な部屋に、宣教師たちの真摯で高潔な精神が漂う。
 応接室には北星学園の創立者、サラ・C・スミスについて紹介されている。1887(明治20)年アメリカ人宣教師のスミスは札幌に寄宿女学校を開校する。1894(明治27)年に、「北星女学校」と改名する。校名は聖書の中にある「Shine like stars in a dark world (世にあって星のように輝きなさい)」に由来するという。その言葉は北星学園の校訓となり、現在に受け継がれている。
 スミスの教育理念は「いろいろな分野で役立つ教養と責任感のある女性へ」というものであった。英語の教育には特に力を入れた。


一階食堂風景

 二階は、宣教師たちの書斎と寝室などのプライベートな空間であった。現在は北星学園の資料展示室となっている。歴代の校長や教師、学生たちの思い出深い資料や写真。入学卒業式、クリスマスの集いなどの行事の記録が飾られている。大正時代の英語の教材は、日本には英語の教科書がまだなかった時代、宣教師が手作りしたものであった。宣教師たちは日本語に慣れない間は、歴史や地理も英語で授業をした。学生たちは解らないながらも、教師の発音を必死にノートに書き写した。そのような苦労が、北星の学生たちの英語力を確かなものにした。明治の時代から既に、自立した女性を育てるという教育は、卒業生たちを社会で活躍させた。


二階資料室展示風景

 帰り際に、館内を案内してくださった卒業生の矢島あづささんは言われた。「初夏にはライラックが咲き、当館も独特な香りに包まれます。札幌のライラックはスミス先生がアメリカから持ってきた苗が広まったものなのです」と。
 札幌の初夏、5月6月のライラックが美しく花咲く頃。また、訪れてみたい。

利用案内
所 在 地:札幌市中央区南4条西17丁目2-2
交通機関:札幌市営地下鉄東西線西18丁目下車南に徒歩7分
開館時間:4-10月 毎週月水金曜日 12:00~17:00
連 絡 先:北星学園女子中学高等学校事務室 011-561-7153 見学は一週間前に予約

付近の見どころ:
北海道の守り神である北海道神宮の前庭には、開拓判官島義勇の像が立ち、札幌の発展を見守っている。隣接する花見の名所円山公園の中には、動物園や総合グランドがある。円山88か所の山道には、鄙びた地蔵群が立ち並ぶ。

文・写真 山崎 由紀子

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