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 「北のミュージアム散歩」は、道新文化センターのノンフィクション作家を育成する「一道塾」(主宰・合田一道)の塾生が書いた作品を連載するものです。道内にある博物館、郷土歴史館、資料館などを回り、ミュージアムの特色を紹介しながら、ミュージアムの魅力やその存在する意味を問いかけます。
 第41回は、札幌市の「札幌オリンピックミュージアム」です。ぜひご愛読ください。

(合田一道)

■第41回 札幌オリンピックミュージアム」~選手たちの偉業と感動の体験~


札幌オリンピックミュージアムの外観
右側の建物が当ミュージアム、左側に大倉山ジャンプ競技場が見える

 「札幌オリンピックミュージアム」は、札幌の中心部が一望できる大倉山ジャンプ競技場の麓にあり、平成27年(2017)2月にリニューアルした。このミュージアムは、札幌などで開催された冬季オリンピック大会と世界のウインタースポーツにまつわる資料を扱う歴史博物館とシミュレーターを使った体験型博物館で構成されている。

 一階と二階が博物館、三階は多目的ホールとカフェである。二階の入口に立つ。前の壁に、「札幌にオリンピックがやってきた!」と題し、ウインタースポーツブームを巻き起こした、市民らの懐かしい写真が貼ってある。その先が、歴史博物館のスペースだ。
 まず、札幌へのオリンピック招致の解説から始まる。昭和3年(1928)に、札幌ウインタースポーツの父と称される秩父宮殿下が来道され、雪質の良好な札幌での冬季オリンピックの開催を推奨した。それには、正式なジャンプ台が必要となり、殿下から大倉喜七郎男爵を紹介され、さらに北海道大学教授でスキー部長の大野精七博士の尽力も加わり、昭和6年(1931)に、60m級大倉シャンツエが完成した。


二階から見える内部

 昭和13年(1938)に、第五回冬季オリンピックの札幌での開催が正式決定したが、日中戦争の長期化により返上となる。戦後の昭和39年(1964)に、東京で開催された夏季オリンピックが終了すると、冬季オリンピックを再び札幌に招致しようとの気運が高まり、開催へと繋がっていく。
 次のコーナーでは、1924年に開かれたフランスのシャモニーモンブランから始まる、パラオリンピックも含む冬季オリンピックの誕生から現在までの変遷を、パネルで紹介していた。今までの開催地と、歴代メダルのデザインやトピックスが、解りやすく展示している。

 昭和47年(1972)の第十一回札幌オリンピックで、フィギュアスケートの銅メダリスト・ジャネット・リンが、選手村の部屋に「Peace&Love」と落書きを残したのは、まだ多くの市民の記憶に残っているだろう。隣のブースには、過去の選手たちの劇的なシーンを、大画面の円形スクリーンで映し出すパノラマシアターがあり、その臨場感にふと立ち止まってしまった。
 浅田真央が着た強化選手用のジャージ、羽生結弦の履いたフィギュアスケート靴、レジェンド葛西紀明が使ったジャンプスキー、カーリングで初メダルを獲得した北見のロコ・ソラーレの選手のユニホームなどを見ていると、テレビを通してしか見たことがない名選手達が、ぐっと身近に感じて来る。

 一階に降りると、ウインタースポーツが疑似体験できるスペースだ。二階まで吹き抜けで広々と感じる。大倉山スキージャンプを飛ぶ選手の視点を体験するシミュレーターに向かう。前面の大型映像を見ながら、踏み切り、飛行姿勢、着地の動作をして、距離と点数が表示される。クロスカントリースキー・レースでは、実際にスキーを動かして、コース映像を見ながらレース体験する。参加者同士で競争も可能だ。
 実物大の四人用ボブスレーに乗り、体重をかけ左右に動かし、時速130kmの滑走をする体験者の表情は、真剣そのものだ。アイスホッケー・ゴールキーパーのシミュレーターでは、映像の攻撃選手のシュートがかなり早く感じるのか、体験者が必死に防御していた。


大倉山スキージャンプのシミュレーター


クロスカントリースキー・レース


四人用ボブスレー

 次は、スライドボードに乗りスケーティングをして、スピードスケートの運動量を実体験するシミュレーターだ。汗を拭っている体験者を見ていると、想像以上に大変なのであろう。雪の無い東南アジアからの観光客は、笑いながら悲鳴をあげていた。
 オリンピックが行われたことにより、地下鉄や地下街など札幌市のインフラ整備が一気に進み、市は再び、新幹線の延伸とからめ、2030年の冬季オリンピックを招致する動きを進めている。ヨーロッパでは、ノルディックスキー、アルペンスキー、スケートと、種類により盛んな国と振るわない国がある。
 だが、札幌は、全てのウインタースポーツが楽しめる天然のメッカなのだ。このミュージアムは、そんな札幌に最もふさわしい博物館に違いない。

利用案内
住  所:札幌市宮の森1274
営業期間:5月~10月 午前9時~午後6時
     11月~4月 午前9時30分~午後5時
入 場 料:大人600円
電  話:011-641-8585

付近の見どころ:
北海道神宮
 大倉山の近くの円山公園に隣接する北海道の総鎮守で最大の神社である。開拓使初代首席判官島義勇が持って来た開拓三神が祀られている。

文・写真 河原崎 暢

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