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 「北のミュージアム散歩」は、道新文化センターのノンフィクション作家を育成する「一道塾」(主宰・合田一道)の塾生が書いた作品を連載するものです。道内にある博物館、郷土歴史館、資料館などを回り、ミュージアムの特色を紹介しながら、ミュージアムの魅力やその存在する意味を問いかけます。
 第36回は、名寄市の「名寄市北国博物館」です。ぜひご愛読ください。

(合田一道)

■第36回 名寄市北国博物館 ~北緯44度の自然の中に生きる知恵を伝えて~


北国博物館外観

 JR宗谷線名寄駅から南東へ徒歩約10分。名寄公園の小高い丘の一角に名寄市北国博物館が建っている。この館は寒暖の差が日本一の名寄で、先史時代から人々が生み出した暮らしの知恵を紹介し、継承発展させていくのを目的として、平成8年2月10日にオープンした。館のテーマは人と自然のハーモニー「北交響」である。

 シマフクロウが彫り込まれたモニュメントに誘われるように、コンクリート造のモダンな建物に入る。 エントランスホールには地球の自転を証明する「フーコーの振り子」がゆったりと動いている。全国でも僅かしか設置されておらず、道内では札幌の青少年科学館と当館だけで見られるとても貴重な装置だ。
 その横にのびる青白い光を放つトンネルは、展示室の入り口で、氷河の洞窟を思わせる幻想的な雰囲気だ。ここを通り抜けると6つに分けられたテーマ展示が名寄の「克雪」の歴史を伝えている。


幻想的な展示室入り口

①「北国名寄」コーナー。巨大な地球儀とマンモスの絵画が展示され、地球上での名寄の位置関係が把握できる。
②「北の先史」では発掘された石器や土器が並び、約4万年前から人々がこの地で暮らしていた事を証明している。
③「カムイの森」は自然を敬い、共存する約3千年前のアイヌの人々の自然観と文化を紹介している。
④「さむさ・ひと・くらし」では寒冷・多雪の北国名寄で、人々がどう暮らしてきたのかを伝えている。

 住まいの移り変わりが先史時代から大きく4棟の建物に分けられ再現されている。原寸大の建屋は断熱とは程遠い形状で、冬の寒さをどう乗り越えて来たのかと当時の苦労が偲ばれる。
 いろいろな形の薪ストーブ、石炭ストーブ、壁一面に並べられた数多くの湯たんぽ。動物の毛をあしらった衣類や履物。木製の橇やスキー。盛りだくさんの展示物から、この地に住む人々が様々な工夫を凝らして、厳しい冬と多雪に打ち克ってきたことが伝わってくる。

⑤「映像コーナー」では3面マルチスクリーンが設置され、樹氷、サンピラー(太陽柱)、ダイアモンドダストの様子が上映されている。サンピラーは零下15度以下の晴れた日、日の出と日没に出現する細氷現象で、博物館の周囲一面が宝石のように美しく煌めく。
⑥「郷土コーナー」では名寄出身の相撲力士大関名寄岩と、アイヌ文化の伝承者北風磯吉の功績を紹介し、天然記念物の「名寄鈴石」「名寄高師小僧」が展示されている。 名寄岩は昭和7年に立浪部屋にスカウトされ入門、以来22年間現役として活躍した。病気を抱えながらも懸命に土俵を務め、その軌跡は「涙の敢闘賞」という映画になり、戦後の日本を大いに沸かせた。礼儀正しい人柄で、賞金を受け取る時に手刀を切ったのは名寄岩が初めてで、その後他の力士も行うようになったという。

 野外に展示されているSL列車は全国唯一残された排雪列車「キマロキ」。その名の由来は排雪用編成列車の頭文字で、機関車の(キ)、マックレー車の(マ)、ロータリー車の(ロ)、機関車の(キ)と連結されている順番だ。設置された場所は平成元年に廃線になった名寄線跡地で、昭和50年までラッセル車では手に負えない高い雪の壁を、力強く除排雪して鉄路を守った。JR北海道準鉄道記念物に指定されており、保存会の有志が大切に手入れを続けている。黒光りする車体は往時の住民の信頼を物語る。
 平成29年度は11,765人が訪れた当館は、厳寒だからこそ培われてきた「克雪」の知恵を伝えている。


日本唯一のキマロキ号

利用案内
所  在:名寄市緑丘222番地
電  話:01654-3-2575
アクセス:JR名寄駅 徒歩10分
開館時間:9:00~17:00
休 館 日:月曜日 年末年始
観 覧 料:中学生以下無料 高校生以上200円

付近の見どころ :
なよろ市立天文台 きたすばる
公開天文台としては全国2番目に大きいピリカ望遠鏡が設置されている。 屋根がスライドする屋上観測室は昼間でも明るい星が見える。

文・写真 渋谷 真希

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