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 「北のミュージアム散歩」は、道新文化センターのノンフィクション作家を育成する「一道塾」(主宰・合田一道)の塾生が書いた作品を連載するものです。道内にある博物館、郷土歴史館、資料館などを回り、ミュージアムの特色を紹介しながら、ミュージアムの魅力やその存在する意味を問いかけます。
 第30回は、江別市の「北海道立埋蔵文化財センター」です。ぜひご愛読ください。

(合田一道)

■第30回 北海道立埋蔵文化財センター ~痕跡を辿る縄文・続縄文文化~


北海道立埋蔵文化財センター外観

 JR大麻駅の南口から国道12号線を行き、札幌学院大学の近くにある文教通りと呼ばれる坂道を上ると、くりの木公園前のバス停が見える。そこから右方向へ進み、公園沿いに歩いて行くと、北海道立埋蔵文化財センターに到着する。百年記念塔が見えるとても長閑な場所だ。

 公益財団が運営する北海道立埋蔵文化財センターは、平成11年4月に北海道教育委員会の委託を受け設置された。この施設の主な事業内容は、埋蔵文化財の発掘調査を行い、研究や出土品の保存をすることだ。また、講演会や考古学教室の普及活動も行っている。

 玄関から展示室へ向かうと、廊下の壁側に、赤石山頂の黒曜石や子供が楽しめる体験コーナーがある。廊下を歩きながら不自然な段差が気になり、職員に話を聞くと、地下に湧き水があるので勾配を考慮して作られたとのこと。この施設は、道立自然公園である野幌自然公園に隣接しているため、環境への影響がないよう地形に配慮した訳だ。

 展示室は310平方メートルの広さがあり、重要文化財である千歳市美々八遺跡出土遺物や、石器、石や木の道具など貴重な物が常設展示されている。室内の正面に北海道文化史年表のパネル説明があり、時代背景と人々の暮らしの状況が読み取れる。
 壁側には、縄文時代の土器が並んでいる。最古で1万年前の物もある。大小異なる土器が数えきれないほど展示され、それぞれに名称が記載されている。模様をよく観察すると、羽状や貝など多様な特徴がある。粘土をひもにして、まるく積み上げながら形を作るといい、作り手の構想力が独創的な模様を生み出していることが伺える。同じ場所に、竪穴式住居と根室市穂香竪穴の繊細な模型もある。

  奥には、重要文化財指定の土面がガラスケースに展示されている。推定2300年前の土面は、千歳市のママチ遺跡で発見された。顔の感じは大人で、眉弓の強い表情から男性とされている。縄文の人々の顔立ちが想像できる貴重な財産だろう。
 特に印象に残るのが遺構調査のコーナーだ。道内の遺構調査に伴うジオラマが鑑賞でき、使用道具も見られる。発掘の状況や測量方法を知ると、現場作業の大変さが理解できる。出土から復元されるまでの工程は、困難に立ち向かう作業でもある。出土品の注記・接合・復元作業を経て、保存へと導く調査員たちの高度な技術と分析力に驚く。古代の文化や環境を未来へ伝え残していく、そんな様子が感じられる。

  常設展示の他に、定期的な企画が催される。筆者が訪れたこの日は『続縄文文化の墓』が展示解説されていた。続縄文文化とは、北海道独自の文化の事を指す。本州の弥生・古墳文化と平行して展開した北海道の様子を、墓や副葬品とともに説明していた。続縄文文化の墓は場所により、特徴的な埋蔵がみられる。横向きで膝を曲げた格好や座位が多く、木棺や火葬を推定させる資料もある。石錐や石斧、琥珀や貝製品など、多量の副葬品も並んでいた。特定の墓から出土されたことにより、狩猟採集社会における階級があったのではないかと、主張する研究者もいるそうだ。墓や副葬品の特徴から様々な研究視点があり、当時の暮らしを復元しようとする試みが行われている。

  高速道路や空港などの工事により遺跡が失われる可能性がある場合、事前に発掘調査が行われる。現代的な文化を築く途中で、埋もれていた歴史の文化が見つかる。その過程に、人類が活動した痕跡が見えてくる。


センター内の光景

利用案内
北海道立埋蔵文化財センター 1階展示室
住  所:北海道江別市西野幌685-1
最 寄 駅:大麻駅南口・徒歩20分
開館時間:9:30~16:30
休 館 日:月曜日・年始年末・臨時有り
入 館 料:無料
T E L:011-386-3231

付近の見どころ:
【野幌森林公園】
国有林が多くを占める野幌森林公園は、鳥獣保護区域に指定されている。 園内の各所に張り巡らされた遊歩道を歩くと、様々な動植物が観察できる。埋蔵文化財センターの敷地からも出入り場所があり、百年記念塔へ続く道がある。

文・写真 雪乃 林太郎

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