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 「北のミュージアム散歩」は、道新文化センターのノンフィクション作家を育成する「一道塾」(主宰・合田一道)の塾生が書いた作品を連載するものです。道内にある博物館、郷土歴史館、資料館などを回り、ミュージアムの特色を紹介しながら、ミュージアムの魅力やその存在する意味を問いかけます。
 第27回は、北見市の「北見手づくり絵本美術館」です。ぜひご愛読ください。

(合田一道)

■第27回 “愛と優しさ”世界でたった一冊の絵本

~北見手づくり絵本美術館~

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北見手づくり絵本美術館の外観

 世界のどこかには、同じような美術館はあるのかもしれない。しかし、この美術館の作品は、どれも世界でたった一冊しかないものばかりである。
 北見手づくり絵本美術館。それは北見市の中心部から車で5分ほど、常盤町の住宅街の中にある。赤い屋根で白い壁のその小さな美術館は、まるで絵本から飛び出したかのような外観だ。

 毎年3月と9月、この美術館は多くの人で賑わう。手づくり絵本展が開かれるのだ。「子どもの成長記録」、「幼稚園児による遠足の思い出」、「石川啄木の詩に絵を添えた詩集」など、あらゆるジャンルの作品100点あまりが展示され、訪れた人たちは皆、目を細める。5日間の開催期間が終了すると、作品は作者に返される。世界でたった一冊の絵本は、作者にとっての宝物であるからだ。こうした絵本展は、1978年以来、途切れることなく北見市で開かれている。美術館は、絵本展の活動拠点として、1984年にオープンした。これまでに出品された絵本は約7000点にのぼる。

 美術館は松岡義和さんの自宅敷地内に建つ。そもそも、なぜ「手作り絵本」なのか。松岡さんは、東京で美術を学んでいた大学生時代、幼児教育における絵本の重要性を学び、1960年に中学校の美術教師としてUターンした。
 子どもの増加に合わせ、バラエティに富んだ絵本が出回り始めた時代であったが、3歳児以下のものは少なく、保育士や親たちがこつこつと手作りしていた。松岡さんは、そうした作品の発表の場として、手づくり絵本展を開催するようになった。美術館の建設には、松岡さんの趣旨に賛同する多くのボランティアが集まった。1本700円の木製電信柱、わずか2900円で売りに出された国鉄官舎など、建材になるものは何でも利用して、総工費150万円で完成させたのだった。

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松岡義和さん

 3月と9月の絵本展以外の期間は、松岡さんはじめ、計3人のスタッフの作品・約200冊の絵本が常設展示されている。松岡さんの手による「小学校の校舎の思い出」「自らの大手術の記録」など、お手本となる絵本が、すぐに見られるようになっている。

 手づくり絵本の代表的なテーマとなると、親から子どもへのメッセージとなろう。常設展示されている絵本の中に、松岡さんの妻の優美さんが作った「雪華がお母さんになったら」という作品がある。娘である雪華さんに14歳の時に贈ったもので、絵の代わりに写真を使っている。

 「ゆきかがおかあさんになったら 夕やけを背に帰ってきた子を ギュッと抱きしめてひなたくささを思いっきり吸い込んで 『一日よく遊んだネ』ってほめてあげて・・・・。そうすれば、たのしい話が いっぱいきけて キラキラする目にであえるから」
 「ゆきかの子が 大きくなったら ゆきかが子どもだった時のことを たくさんきかせてあげて ゆきかがつらかった時のことも 悲しかった時のことも うれしかったことも いっぱい いっぱい きかせてあげてよ そうすれば いつでも おかあさんは その子の中に生きつづけるから・・・・」

 まだ母親になるには相当の時間がかかる時期の雪華さんに、優美さんは、自分の体験も交えた惜しみない愛を表現している。実は雪華さんはちょうど女の子の母親になったばかりだ。この絵本を久しぶりに読んだ雪華さんは「14歳に読んだ時は、母から私への愛情をとても感じてジンワリしたのを覚えています。ただ、今は自分の視点がすでに親目線になっていることに気づき、全世界のお母さん向けの絵本になったような不思議な感覚です」と話している。
 世界にたった一冊の手づくり絵本は、あくまでも個人のものだ。しかし、そこに込められた愛と優しさのメッセージは普遍的なものであろう。雪華さんは、今度は、自分の娘にどんな手づくり絵本を作ってあげるのだろうか。

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松岡優美さん作・雪華がお母さんになったら

利用案内
場  所:北見市常盤町3丁目16-71
電  話:0157-22-1427(松岡義和さん宅)
開館時間:午前10時~午後4時
休 館 日:月曜日
入 館 料:特別展示期間以外、無料
事前連絡で、手づくり絵本の作り方教室も可

付近の見どころ:
香りゃんせ公園 ~ 北見市朝日町河川敷
常呂川河川敷に広がる水とハーブの公園。公園中央にある大きな噴水をシンボルとし、園内には、50種類以上ものハーブが市民の手によって植えられている。7月には「香りゃんせフェスティバル」が開催される。

文・写真 坂野 秀久

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