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 「北のミュージアム散歩」は、道新文化センターのノンフィクション作家を育成する「一道塾」(主宰・合田一道)の塾生が書いた作品を連載するものです。道内にある博物館、郷土歴史館、資料館などを回り、ミュージアムの特色を紹介しながら、ミュージアムの魅力やその存在する意味を問いかけます。
 第24回は、札幌市の「札幌 いま・むかし 探検ひろば」です。ぜひご愛読ください。

(合田一道)

■第24回 札幌 いま・むかし 探検ひろば ―写真で見るありしの札幌市民―

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札幌丘珠空港ビルの外観。「札幌いま・むかし探検広場」はこの2階にある

 「札幌 いま・むかし 探検ひろば」は、200万人都市まで成長した札幌市の歩みを、主に写真と図で構成したミュージアムである。7年前に開館し、札幌丘珠空港ビル2階の出発ロビーに隣接している。この「ひろば」の特徴は、テーマを市民の衣食住や趣向に着目した点だ。空港来場者を増やすため、札幌市が気軽に入れる様に工夫したが、予想以上にスペースが広く内容も濃い印象だった。

 内部は大きく、展示室と映像コーナーに分かれている。展示室に入り、壁際に貼ったパネルから見ていこう。幕末から現在までの総括的流れを説明している。先住していたアイヌ民族の暮らし、幕臣の大友亀太郎が後に創成川となる農業用水路を掘る事から始まっていく。明治初期の本府創設では、開拓判官島義勇の「石狩國本府指図」が展示していた。
 創成川より眺めたパノラマ写真の街並から、荒野を切り開いたばかりの札幌がリアルに感じる。移民により進められた本府建設、更にお雇い外国人の技術導入から近代化する札幌がうかがえた。

 創成川河畔の高さ44mの消防望楼の写真や、丸井今井の屋上から見たパノラマ合成写真より、大正から昭和初期の雰囲気に浸れる。
 太平洋戦争中、北大構内や大通公園も畑となり動員された学生や学童の耕す姿や、終戦後の創成川沿いの闇市でごった返す市民の写真には、思わず身につまされた。
 昭和の高度成長期、北海道開発が推進され多くの大企業が進出し、札幌は大きく変貌する。完成時の札幌テレビ塔、アジア初の冬季オリンピックの写真などが見られる。平成に入り、YOSAKOIソーラン祭り、札幌ドームやコンサートホールKitaraのオープンと、文化芸術都市に発展する姿が見て取れる。

 部屋の空間に立つ看板のパネルに移り、今度は、市民に密着した歴史に変わる。まず交通コーナーには、開拓時のケモノ道に近い平岸街道の写真があった。市内を走る馬鉄が電化と官営化で市電となり、その時代別の路面図に興味を持った。昭和初期に札幌~東京間定期航路も開設され、北区北24条にあった珍しい札幌飛行場の写真もある。

 衣服のコーナーでは、綿入「ちゃんちゃんこ」や重ね着の「刺し子」の写真が並んでいた。官吏の制服に洋服が採用され、洋装が市民に浸透していく過程が説明されていた。昭和初期には、ゴム長靴や毛糸のセーターが大衆化していく。
 戦後には化学繊維の防寒着が普及し、冬季札幌オリンピックの外国人からファッション性の高い服装が流行り出した。
 食のコーナーで、食卓上の食事の模型写真を見て、移住民の粗末な生活ぶりがひしひしと伝わって来る。明治時代の洋食店広告や晩餐会メニューの写真には、興味を持つものがあった。
 住宅のコーナーは、開拓初期の草葺小屋を野火の原因として焼き払った「御用火事」があった。その火事を指揮する岩村判官の乗馬した珍しい絵の写真も見れる。頑丈な洋風建築が導入されブリキ製のストーブが普及し、大正~昭和初期に石炭ストーブになる。お洒落な和洋折衷の「文化住宅」も現れた。寒さに適応していく住宅の進歩が解かる。
 商業のコーナーでは、当時は舟輸送していた創成川と、南1条通りの合流地から商店街が形成された。今も同じ場所で営業する丸井今井呉服店や金物問屋池内商店の古い写真があった。デパートとなる丸井今井と東京から進出した三越の昭和初期の広告や、初めての本格的な喫茶店ルビーの写真もある。
 最後のスポーツコーナーは、スキー・スケートの普及する様子を説明している。特に下駄に金具を付けたスケート靴の写真には、当時の工夫を感じさせた。昭和初期の全国冬季大会が開かれた荒井山シャンツエや中島公園スケート場の写真もあった。
 隣の部屋に移動すると、丘珠地区の歴史と文化財の説明、丘珠空港の秘密が興味深く書かれていた。飛行機雑学クイズも楽しめる。

 「映像でふりかえる札幌の今・昔のコーナー」では、街並み、乗り物の移り変わり、風物・くらし、そして丘珠獅子舞を、それぞれ5分間にまとめていた。レストランもあり、麺に丘珠名産の玉葱を練りこんだ「丘珠ラーメン」は、ここだけのお薦めだ。

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札幌いま・むかし探検広場の館内光景

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札幌丘珠空港の2階。右に売店、中間にレストランがあり、左奥に札幌いま・むかし探検広場がある。

利用案内
場  所:札幌市東区丘珠町丘珠空港内札幌丘珠空港ビル2階
開館時間:6:30~17:30
電  話:011-785-7871
見  学:自由

付近の見どころ:モエレ沼公園
平成17年(2005)にオープンした、彫刻家イサムノグチが基本設計した公園。自然と芸術が癒合した景観が美しい。ここから、札幌市の夜景も楽しめる。

文・写真 河原崎 暢

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