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 「北のミュージアム散歩」は、道新文化センターのノンフィクション作家を育成する「一道塾」(主宰・合田一道)の塾生が書いた作品を連載するものです。道内にある博物館、郷土歴史館、資料館などを回り、ミュージアムの特色を紹介しながら、ミュージアムの魅力やその存在する意味を問いかけます。
 第23回は、札幌市の「広島・長崎原爆資料北海道展示館」です。ぜひご愛読ください。

(合田一道)

■第23回 Hokkaido No More Hibakusha Museum
<広島・長崎原爆資料北海道展示館> ―北海道からも核廃絶による平和を訴える―

 広島・長崎原爆資料北海道展示館は、札幌市白石区にある。JR千歳線・平和駅連絡通路南口から歩いて1分ほど。東京以北でただ1つの原爆資料展示館である。北海道被爆者協会の「北海道ノーモア・ヒバクシャ会館」の2階にあり、「原爆資料展示館」も「ヒバクシャ会館」も同じと考えて差し支えない。
 外観は煉瓦色の3階建、原爆ドームを模した造りが特徴的だ。また、建物脇には白字で、「被爆者はもう私たちだけにして」と刻まれた黒い石碑がある。

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「北海道ノーモア・ヒバクシャ会館正面」(北海道被爆者協会提供)

 北海道ノーモア・ヒバクシャ会館は、毎年、北海道で行われている原爆死没者追悼会に集まる被爆者の「同じ苦しみや悩みを持つ人達が、ゆっくり語り合える場所が欲しい」との訴えや願いに応え、1982年から建設への動きがスタートした。
 9年間にわたる建設運動の中で、核兵器をなくし、ふたたび被爆者をつくらせないという、国内外の3万人を超える人々の寄付によって、1991年に完成した。
 建設地がこの土地に決まったのは、北海道新聞に「建設地を求めている」と掲載されたのをきっかけに、土地の寄付を申し出た方の所有地をもとに、代替地として購入したのが、たまたま「平和駅入り口の目の前」であったという。

 北海道に被爆者は700人余りいたが(いわゆる手帳交付者。被爆した人の実数は1,000人以上とも言われる)、今では半数以下の321人となり、平均年齢は82歳を超えている。そこで、2017年5月に、北海道在住の被爆2世が、「被爆二世プラスの会北海道」を設立し、父母世代の被爆体験と思いをどのように継承するかを模索している。また、活動趣旨に賛同する支援者にも呼びかけ、活動の輪が広がっている。

 建物に入ると、右側に高校生グループが制作した原爆ドームの模型が置かれている。左側の階段を昇ると、2階フロアーが、「広島・長崎原爆資料北海道展示館」で、原爆投下時の人体の被害状況、廃墟と化した市街の状況等のパネル写真が約100点と、原型を留めないほどに溶けた瓦、変形したガラス瓶、釉薬が溶けてくっついた茶碗など、数10点が展示されている。

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「広島・長崎原爆資料北海道展示館の館内光景」(北海道被爆者協会提供)

 パネル写真「地獄」の中に、次のような詩が書かれている。

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 パネル写真「地獄」の人形模型は、教師や親達から「子供に心理的な影響を及ぼすので、取り除いた方が・・・」が理由のひとつで、現在は、広島の原爆資料館には展示されていないと説明を受け、複雑な思いを抱いた。
 3階の右側に図書室、左側には学びと交流スペースがあり、「人間をかえせ」等のDVD鑑賞ができる。北海道被爆者協会の活動としてこの他に、「被爆者の証言活動」もしている。

 会館建設時から長く会長をつとめられた越智晴子さん(2016年12月逝去)は、「子や孫たちの体調が少しでも悪いと聞くたびに、それがささいな事であっても、自分の被爆が原因ではないかと心をいためてきました。(中略)ひとりでも多くの人がこの資料展示館を訪ねてくださるように願っています」とメッセージを寄せている。これは会館建設にかかわったすべての人たちの思いでもあろう。

 原爆被害の言語を絶する実相に触れ、「ノーモア・ヒバクシャ」、「核兵器完全禁止」の思いをさらに強くし、来訪者から寄贈された色鮮やかな千羽鶴に、打ちのめされたこころが慰められた。

利用案内
場  所:札幌市白石区平和通り17丁目北6-7
     広島・長崎原爆資料北海道展示館(運営は一般社団法人北海道被爆者協会)
     連絡先 電話/FAX(011)865―9545
開館時間:10:00~14:00
休 館 日:土・日・祝祭日(ただし夏期は日曜日も開館)
     ※開館時間・休館日については変更もありますのでお問い合わせ下さい。
入 館 料:無料
交通機関:JR千歳線:普通列車で平和駅下車・長い歩道橋を右方向に進み、出口の前
     中央バス(本郷線白34):地下鉄白石駅(東西線)より乗り換え、
                 中央バス北柏山行き終点から徒歩1分
     タクシー:地下鉄南郷18丁目駅より約5分

付近の見どころ
平和公園:札幌市豊平区月寒西2条7丁目
旧陸軍の戦没者・病没者の慰霊ために建立された「忠魂納骨塔」を中心として、周りの国有地を整備し、1961年に開園された公園。 園内には満州桜や千島桜が多く植樹され、平和を祈念する貴重な場となっている。

文・写真 黄瀨 芙美子

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