家具・インテリア大手のニトリが、中国人富裕層向けの別荘販売に子会社のニトリパブリックを通じて乗り出した。場所は、千歳市泉沢向陽台の文京地区。7月初旬には、17棟が完成引き渡された。ニトリでは、将来的には千棟を目標にしているという。
しかし、この事業はニトリパブリックが行っているためちょっとした波紋が広がっているというのだ。


と、いうのもニトリパブリックは、広告代理業が本業だからだ。地場大手の広告代理店だったパブリックセンターが行き詰まり、04年11月末に民事再生を申請したのち、翌年3月に清算型民事再生の手法で営業譲渡され引き継いだのがニトリ。パブリックセンターのクライアントを引き継ぎながらにニトリパブリックとして再スタートを切った。
ニトリパブリックは、ニトリグループのハウスエージェンシー(広告主専属の広告会社)的な色合いが濃く、実際業界内では65~70%近くはニトリの広告が占めているのではないかと言われている。それでも、パブリックセンター時代からのクライアントも多く、人的なつながりがそうしたクライアントを繋ぎとめているのも事実だ。
ところが、今回のようにニトリパブリックが新規事業として別荘販売に乗り出すことになれば、一面ではクライアントと競合することになる。中国人富裕層向けの別荘販売ということで、道内ハウスメーカーと全面的に競合することにはならないが、広告代理店がクライアントの事業領域に進出することの意味は、ニトリパブリックが考えている以上に大きい。
ニトリは、将来的にはこの別荘販売を千棟まで拡大するとしているため、この事業を担当するニトリパブリックは広告代理店から不動産会社への傾斜を強めていくと考えざるを得ない。
広告代理店は知識と経験を蓄積した専門職が能力を発揮することで厳しい競争を勝ち残ってく環境が整う。中国人富裕層に照準を置いた新たなビジネスには成長余力が大きいことは当然だが、ニトリパブリックの変容に社内外から戸惑いの声が漏れている。
※2016年1月24日記事一部修正

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