セイコーマートの実質的な創業者である赤尾昭彦会長は、20日に行われた同社の政策説明会でセイコーマートの目指す方向性や具体策について明らかにした。
その中で、赤尾会長は既に展開している農業生産法人で本州のチェーンストア向けの契約栽培を行う考えや米国に拠点を設置し北海道発のグローバル展開を模索していくことも示した。以下、セイコーマート政策説明会ダイジェスト版の2回目を紹介する。(写真は、講演する赤尾昭彦会長)
 
「当社は、株主代表訴訟を5年くらいやっていたが、本日判決が出て完全勝訴した。非常に精神的なプレッシャーだったが世の中にはいろんな人がいる。大きな経験だったと思っている」
(※編集部注―セイコーマート株主である田中誠元社長夫妻が赤尾会長と西山政一前社長に対し同社資金を不正に流出させたとして6億8000万円の賠償を求めていた株主代表訴訟の判決が20日札幌地裁であり、田中氏側の請求が棄却された)
 
「米国サンディエゴの近くにセイコー・インターナショナル・トレーディングという会社組織の事務所を持っている。現地の女性2人で情報収集などを行っており15年になるが、今回、正式に当社から社員を送り込んだ。3ヵ月、6ヵ月で次のビジネスの足がかりを掴むことが出来ないだろうかと考えている」
 
「ヨーロッパも激しく動いており、今後の日本の景気はどういうようになるのか分からないが、ヨーロッパをどう見るかによって競争力に相当大きく関係してくるだろう。当社社員が現地に出向いて良い情報もレポートされている。これもこれからの新しいセイコーマートの方向として役立つのではないか」
 
「セイコーマートの創業は、酒の小売店の経営近代化から始まった。酒の業界の小売店と一緒に仕事をやることとフライチャイズということで、全然酒と関係のない人にも加盟店に入ってもらって事業をしようとしてきた。実を言うと、酒の業界については暗黙のルールがある。ところが、外部から入ってくる人はそういうルール関係なしに私どもに問題提起され、非常に苦しんだ。『業界ごとに考えがあるんだ』と、それは否定するわけには行かなかったが、そういう中で時間が経ってしまった」
 
「私はそのとき30歳だったが、当時の加盟店のオーナーも大体30代か40代くらいだった。それから30年、40年経ち加盟店も代替わりの段階になっている。代替わりで加盟店オーナーの息子さんたちが後継者として継続する店については『是非やってください』というスタンスだが、高齢化して店をやらない場合には私どもがお引き受けしてそのまま続行している。一般に言うコーポレートチェーン、直営店化していく政策を既に7~8年前から展開しており、現在直営店も700店近くになった」
 
「直営化していくにしても、法人ごとに酒の免許があってバラバラだった。それを合体しながらいくつかの大きな会社作ってきたが、非常に時間かけ苦労した。しかし、ひとつの形は出来上がった」
 
「直営店の売上げは、おそらく1000億円はいくのではないか。これまでのフランチャイズチェーンの性格からコーポレートチェーン、会社チェーンとしての性格が色濃くこれからの政策の中には出てくるだろう」
 
「まだ30数%がフランチャイズ(FC)のセイコーマートを経営されているので、そういう店について私どもは強制的に辞めろとも言わないし、うまく行っていればそのままやってもらうことに変わりはない。ただ、全店に後継者がいるわけではないし、そういう状況の中ではコーポレート店=直営店が7割かもうすこし増えるかも知れない。残りはFCという形で今後の組織運営はされていく」
 
「私は、これに(直営店化)ついては非常に良かったと思っている。私は壁にぶち当たったら壁を突き破ることはあまりしないが、やはり時代の状況をよく読んで、どう対応して経営を展開していくかということは必要。直営化したことについては非常に良い意思決定だったし、これからますます競争が激しくなるからその中で直営展開は非常に役立つのではないかと考えている」
 
「いろいろな会社をどんどん増やしている。14歳以下の子供さんが極端に減り、私を含めた65歳以上の人が急速に増えている。でもこれは永遠に膨れ上がるわけではない。いずれは減少する。そのとき、地方都市はどういう形になっているか、北海道はどうなっているかと考えたとき、人口が少なくなって農地はたくさん出てくるだろうということが見えてくる。農業は実を言うと酒の小売業界とよく似ている。農家はこれまで法人が認められず個人経営だった。農業も免許のようなもので、1年間農家に入り込んで経験を積んで組合か何かの許可を得なければ農業ができない。そういう意味では酒の業界と非常に似ている」
 
「農業は今、法人化され大規模化されようとしている。全国を見たとき、自給率が下がっている中で例えば牛乳なら全国の51%を北海道が生産しているという数字がある。他の農畜産物についても人口減少して農家が離脱して空き地がたくさん出てくると、農畜産物の値段が高くなってわれわれはその段階ではとても参入できない。今のうちに参入して農業の状況をいろいろ経験しながら、そういうときが来たときに対応しようと考えている」
 
「そのときに、どこに売るかと言うと、本州の人口密集地のチェーンストアとかきちんと話の通じるような先に契約栽培することによって新しい事業展開が出来るのではないか。単に農業やメーカーとして川上から川下まで行くのではなくて、北海道という特性を生かして次の時代に繋げるようなことを現在行っている」
 
「あと10年、20年経ったときに実際に分かってくるが、今予測できることに対してどう手を打つか、しかも時間をかけてきっちり作っていかなければいけない。酒の業界を近代化する目的は終了した。セイコーマートを始めた当時に描いた夢は全部実現した。しかし、実現したときには世の中はもう変わっている。次の世の中に向かって当社社員はじめ関係する加盟店を含めてさらなる事業展開できるような形を模索している」
 
「その中のひとつが単なる本州に対するビジネスだけでなくやはり世界に対して買ったり売ったりする、そういうビジネスがあるのではないかと思っている」
 
「社内では英語を勉強しており、社員の希望者はみんな毎週英語の講義を受けている。英語を話せる人をどれだけ社内に作れるかによって新たなビジネスチャンスを見つけることができるのではないか。そのあたりもセイコーマートの課題と考えている」
 
「丸谷社長は入社して6年目に入ったが、精力的に仕事を進めてもらっており、私とすれば非常に満足している。グループの会社がどんどん増えているが、すでにプロパーの正規社員の6名か7名がグループ会社の社長になっている。彼らはみんな私よりもしっかりしているが、彼らが次の新しい人を育て良い会社を作っていってくれればいいかなと思っている」
 
「今期はグループ全体で60億円の投資をする。そのうち50%くらいを新店開発に充てる。依然として新店の展開競争は激しさを増しているが、私は競争というのは、やっているうちにまた新しい競争の仕方を覚えるものだなと思っている。競争をしなかったらも僻む方に回らなければいけないが、競争している当事者には楽しみながら次の新しいチャンスを作るための競争だということを分かってもらえれば良いと思っている」


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