セイコーマートは20日、札幌パークホテルでメーカーや卸、金融関係者などを招いた2012年政策説明会を開いた。セイコーマートの商品政策や販売政策、開発の方向性などついて明らかにするもので毎年この時期に行っている。北海道リアルEconomyでは、政策説明会の内容をダイジェストでシリーズ掲載、初回は丸谷智保社長の講演から前半部分を紹介する。(写真は、丸谷智保社長)
 
「昨年は3・11をはじめとして様々なことがあった。ひとつは、タバコの売上げがコンビニエンスストアに集中したことだ。09年から11年までの3年間で全国のコンビニでタバコ販売は約2兆円増えている。値上げもあったが、非常に大きな金額がコンビニエンスに集中、同時にそれに伴うお客様の数も増えてきた」
 
「タバコだけでなく、震災による買い場の集中など社会的な現象としてコンビニエンスにお客様が集中し始めている」
 
「昨年来からの流れで言えば卸、特に食品問屋の統合があった。三菱食品をはじめとしてアクセス、旭食品、カナカン、丸大堀内の統合など特に商社系を中心に食品卸の統合が進んでいる。また、全国2000社と言われているスーパーの統合も進んできた。北海道ではアークスがユニバース、ジョイスと東北を商圏とする統合が進んでいる。西ではイオンとマルナカのように大きな動きがあった。今後ますます卸やスーパーの集中は続いていくだろう」
 
「コンビニエンスはもともと集中度が高いチェーン業態。全国で1000店舗以上あるコンビニエンスは7社。その7社でコンビニエンスの90%以上の店舗数を有している。コンビニはかなり大手や中堅への集中化が進んでいる。そのコンビニでもampmがファミリーマートに入り、局地戦として富山のサークルKのエリアフランチャイズがローソンに鞍替え、千葉のシー・ビー・エス・ベイエリアもサンクスチェーンからローソンに鞍替えした。こうした100店、200店規模の大きなシフトも昨年起きている」
 
「セイコーマートの商品政策では、力を入れてきたホットシェフ、100円惣菜、リテールブランドの飲料水、ワインといった特徴的な商品が伸びた。また、直営店が700店になったが、直営店化がさらに進んだ1年でもあった」
 
「北海道マーケットは、人口が減少しているが世帯数は増加している。高齢化の進展スピードも全国よりも早い。食品の購入は、家族型の大量購買から単身世帯化による個食型購買へ段々姿を変えていっている」
 
「業態別で5年間の変化では、目立つのはミニスーパー、酒屋、タバコ屋、一般食料品店の減少だ。その代わりにコンビニエンスが増えている。道内の様々な地域から食料品店などの店がなくなっており、買い場に困っている人が増えてきていることが分かる」
 
「全体的に北海道の食品マーケットを見ると人口減少、過疎化、高齢化で食品売上げは減少の一途を辿っている。その一方で、買いたくても買い場がない地域に住んでいる人たちもたくさんいる。それを考えると、過疎化や人口減少はマイナス要因ばかりではなく、空白マーケットとして別な意味でチャンスになるのではないかと考えられる」
 
「セイコーマートは、全道179自治体のうち169自治体に出店しており、カバー率は94%、人口では99%をカバーしている。ほぼどんな地域でもセイコーマートの店舗は存在している。そこに隈なくモノを運べる物流網も持っている」 
 
「北海道の激戦区はもとより商品がなかなか入りづらい、運びづらい過疎地にも商品はどんどん入っている。我々は、そういう強みを持っている。大手メーカーが本来、捨てているようなマーケットや見過ごしがちなマーケットを少しでも取っていくとメーカーには売り上げ増のチャンスがある」 
 
「北海道の過疎化マーケットもひとつのオポチュニティと考えてもいいのではないか。決してマイナス要因ばかりではない。買いたく手も満たされない人が実は増えていると言っても過言ではない。こういったことは、北海道のみならず、全国の過疎地域、高齢化地域に共通して起こってくるだろう」
 
「こういった見過ごされたマーケットに強いチェーンはどこなのか。メーカーの皆さんは最終商品がどういったところに売れるかというマーケティングは十分やっているでしょうが、どのチェーンがどんな売り場をもっているのか、どのチェーンはどの客層に強いのか、といったようなチェーンのマーケティング、売り場としてのマーケティングを果たして十分やっているのかどうか。私はそこがエンドユーザーマーケティングと合わせてきわめて重要なポイントではないかと思っている。そこに早く着眼したメーカーが、強みのあるチェーンと組んで伸ばしていくことが今の流れから言っても重要なポイントではないかと考えている」
 
「マーケットをペシミスティックに見るのか、楽観的に見るのか。私は、常にマーケットは前向きに楽観的に、そして常にチャンスがあると見ていくべきではないか思っている」
「小売業で重要なのは通過していく客の量ではなくて固定的にその店で買ってくれる固定客。これをどれだけ持てるか。固定客のベースがないとその店の売上げは上がらない。固定客をどれだけ作るか、そこが重要。何人くらい固定客を持っているのかが、その店の価値を決めチェーンの実力になる。北海道で、コンビニが増えたと言うが主に増えたのは都市部。その意味ではまだまだ限界型マーケットにはチャンスが残っているともいえる」
 
「セイコーマートには年間2億4000万円のお客様が来る。2億4000万人は多いのか少ないのかという話もあるが、北海道の人口は550万人。この550万人のお客様が毎日365日来店をしてくれると仮定すると、550万×365日=客数ということになり、その数は20億750万人だ。2億4000万人は20億人の12%しかシェアが取れていないとも計算できる。シェアを20%に高め4億人の来店を目指すということも的外れな数字ではないと思っている」 
 
「いかに北海道の人口が少なくて過疎化が進んでいるといっても、実際のところは、毎日来てくれる固定客をどれだけ増やせるかの勝負になってくる。1店当たりの商圏人口が2000人を切ってきたから、もう危ないぞと危険水域とみるのか、マーケットを三次元的な構造で考えるかだ。お客様の嗜好とかいろいろなことが購買行動に出てくる。マーケットは非常に複雑且つ多面的な深い三次元構造を持っている。これをもっともっと深堀りし、同じ人が何回も来店するなど頻度を増やすことが重要ではないか」
 
「1日の全店舗の客数が80万人を超える日も出てきているし、1店舗での最大客数が1日4500人を超える店も出現している」
 
「『セイコーマートは中国や東南アジアに進出しないんですか』と良く聞かれるが、それは平面的な考え方。北海道がダメだということを前提にして皆さん考えているわけで、我々としてはまだまだしっかりとお客様を取りきれているのか反芻している。イギリスのテスコは30%もシェアがある。我々はまだまだ地元でお客様を固定化していくように、努力すべきことは十分あると考えている。北海道には、20億人のマーケットポテンシャルがあるわけだから、見ず知らずの中国のマーケットよりも遥かに大きいのではないかと思う」
 
「なぜセイコーマートは北海道にこだわって商売をしているのかというと、北海道には有効な資源、特に食べるものに対しての資源が豊富にあるからだ。鉱物やエネルギーだけが資源ではなくて食べるものも重要な資源と位置づけられる。例えば水。水はものすごく重要なナチュラルリソース。農業も資源。なぜ資源かというとそこから毎年作物が収穫できるからだ。水産業も酪農業もそうだ。こういったリソースを十分に生かしてここに根を張って商売が出ているのは幸運かも知れない。豊富なリソースに囲まれたところでただ単に小売りだけではなくこのリソースを生かして製品を造り、より新鮮でよりおいしいものを道民の手の届く価格で届ける――このことが昨年の日本生産性本部から顧客満足度ナンバーワンと評価されたポイントだった」
 
「セイコーマートは川上から川下まで事業展開しているため、時にはユニクロのような製造小売だと言われている。しかし、食品に関して言うと、作って運んで売るというのは決してたやすい事ではない。食品には、おいしさだけでなく鮮度や品質が重要で、色も大切なファクターになる。自ら作るということは作った商品に対して品質を保証する責任をもたなければいけない。様々なクレームがあったり、運ぶ途中に温度が変わって商品がダメになることもある。我々の責任ばかりでなく契約している運送会社が間違ってしまうこともある。しかし、作った以上はすべて作ったものの責任。これはメーカーが一番苦労しているところだと思う」
 
「簡単にPB(プライベートブランド)と言うが本当のPBとは何か。表にプレミアムと名づけても裏に『○○食品』と書いてあるものはPBではない。自分で作ったものには、PL責任(製造物責任)が発生する。だからその商品について責任をもってまじめに作るしトレーサビリティもしっかりする。責任をメーカーにベンダーに押し付けて『これは我々のPBでごさいます』と言っているのは、PBではなく留め型といってダブルブランドだ」
 
「我々はリテールブランド(RB)と言ってPBという言葉を使わない。リテーラーが作るブランドということで、自分たちで商品の原材料を吟味したり中に入る入れるものについてしっかり商品のスペック検証をしている。我々はひとつの商品で6枚のスペック表を作る。メーカーとしっかり協議して販売者セイコーマートとして売っていくもの、これこそが本来のプライベートブランドでありリテールブランド。だからこそお客様が信用し安心して買ってくれる」
 
「セイコーマートには二つのブランドがある。ひとつはセイコーマートブランドであり、もうひとつは北海道としいうブランドだ。北海道の原材料を使ったものは北海道のマークをつけるようしている。北海道は大きなブランド力になる。『セイコーマートのリテールブランド商品を売って欲しい』という話がたくさん来ている。既に一部商品を供給しているが、今後領域も増やしていく考えだ」


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