セイコーマートは21日、札幌パークホテルで取引関係者や金融関係者などを集めて2011年の政策説明会を行った。今年の店舗や商品政策が明らかにされたが、同社の赤尾昭彦会長はセイコーマートグループの今後の方向性について「北海道に根づいた総合企業」を目指す考えを明らかにした。販売、物流、製造のサプライチェーンについて積極投資を続け、5年後には他に例のないサプライチェーン構築を実現すると述べた。以下に、赤尾会長の発言を掲載した。(写真は、政策説明会で語りかける赤尾会長)
 
「全国的にコンビニの売り上げを見るとここ3~4年は恵まれた。一番大きな要素はタバコ。コンビニでは、単にタバコだけが売れるだけでなくタバコに関連してモノが売れ、お客様が増える。タバコ値上げもあって去年から今年は特に恩恵を受けている」
 
「6月のコンビニ業界の全国売り上げは9%増だったが、茨城で展開するセイコーマートは18%くらい増加し、本州系コンビニチェーンの倍くらい伸びた。
 東日本大震災では、いかに北海道の存在価値をお客様に知ってもらうかという政策の下に、殆ど休みなく店舗展開し商品供給も潤沢に行った。今まで関東では、相手にしてくれなくて非常に苦労したが、店舗、卸、製造メーカーとセイコーマートグループが関東に進出してからようやく認知され黒字転換できた」
 
「食品小売りのマーケットを見ると、タバコの販売がマーケットを大きく変えてきた。スーパーはあまりタバコに力を入れていなかった。いかにタバコが強い商品であるかを認識しないで片手間にやった結果、食品小売り市場でスーパーのシェアは低下していった。
 何を売ろうとしているか、はっきりしないのが今のスーパー。あまり使命感持たないで、ただ安く売る。そして話題になることをやる。そういうことを繰り返している結果が、今にあらわれている」
 
「私は、コンビニが30年もやれるとは思っていなかったが、これが現実的に北海道で実現している。北海道の結果は、全国的に出てくるかも知れない。なぜなら当社グループが5年前かに始めた野菜販売も全国のナショナルチェーンが積極的に扱い始めたからだ。北海道の取り組みが、全国に広がっている」
 
「スーパーの売場は広く沢山の商品がある。SKU(在庫保管単位)は、1万5000とか2万。それに比べて、コンビニには限られたSKUしかない。しかし、1000店あったら棚が1000枚あるのと同じ。単品ではスーパーと比較にならないくらい販売力持っているのがコンビニだ。
 大型のスーパーよりも、コンビニの方がはるかにマスになる。スーパーが今後とも潰しあいをし合って店舗ブランドはどんどん減っていけば、『お客様のために』と言葉では言っているが、本当にそういうことになるのか疑問。それに反してコンビニは北海道の食品小売りマーケットで30%のシェアを持って、それができるのではないかと考えている」
 
「小売業はあまりにも目先のことばかり考えているのではないか。人材育成には30年かかる。セイコーマートグループの製造子会社は20社くらいあるが、そのうちプロパーの社長が6人出ている。ようやくプロパーの社長がでるようになり彼らも力を発揮している。何をやるにも最低10年はかかる」
 
「セイコーマートグループの農業法人も大きくなったが、もう5年が過ぎてしまった。それでも、自分で考えた品質やおいしいもの自分自身で作ることができる意味は大きい。お客様に『自分たちはこういう良いモノ、美味しいモノを作りました』と提供できる。
そういう商品を作り続けることが、コンビニから一歩踏み出した新しい方向性と考えている。その取り組みには5年、10年と時間かかるがしょうがないと考えている」
 
「セイコーマートグループは、北海道にしっかり足をつけて根付くことを基本にしたうえで商品作りを進める。北海道という天候に恵まれた豊かな土地があるのに、そこで泣き言を言ってもしょうがない。こんなに良い土地はどこにあるのか、とセイコーマートグループの社員はその考えの下に、全国の人や東南アジアの人々に北海道を知ってもらうのを目標にしている」
 
「今年から来年にかけての店舗は、出店50店で純増30店にする。設備投資は昨年が40億円強だったが、今年は50億円程度を考えている。そのうち20億弱が出店のための投資だ。
 道内1000店の土台と大きな資金力を持つようになって、設備投資がしやすくなった。これまでどおりの売り上げがずっと続くことは考えられないかも知れないが、長期的見通しに立って設備投資は続けていきたい」
 
「北海道に店舗を展開して、商品を作るだけではなく、本州の市場にグループのメーカー商品を積極的に供給していきたい。現在、牛乳や惣菜は大阪まで出荷している。小売りやチェーンのことは、自分で経験してきたので、どういう商品が望まれるかは自分なりにわかっている。そういったメーカー商品を育成していきたい」
 
「小売りではグループができ、物流の仕組みはまだまだと思っている。原料買い付けから最終販売まで行っているが、いろんなことをしているうちに見えてきた。サプライチェーンは本格的にやらなければいけないと強く思っている。4年前からシステム投資を続け、物流関連の本格的な投資を継続しているが、これもおそらく10年かかるだろう」

「しかし、その時には今までにないようなサプライチェーンシステムが出来上がるのではないかと思っている。サプライチェーンは、最近ようやく第一段階、第二段階くらいまで進んできてコストダウンについてはかなり実現できるのではないかと考えている」
 
「グループの水産加工会社では根室から羅臼にかけての市場で魚を競り落とす権利を6枚持っている。市場にうちの社員が行って魚を競り落としてくる。欲しいものは、自分で値段つけられる体制になった。そうして買い付けた魚介類にも自分たちになりの販売方法がある。道内、本州の店舗で販売できるし、業務用にも販売できる。さらに惣菜にもできる。事業を展開するうちに新しい事業がまた見えてくるものだ」
 
「セイコーマートグループには、全道各地域に買収したり経営参加した会社があるが、従業員も引き継いでい。そこから様々な情報が上がってくる。それをヒントに事業が生まれる場合もある。セイコーマートグループは、本格的に北海道の流通合理化に寄与できるのではないかと考えているが、それは次の世代に任していきたい」
 
「人材には、丸谷智保社長をはじめ拓銀出身者や雪印出身者、本州の機械関係の経験者など数多くいる。そういう人たちの技術を伝授してもらって、我々も統合化、専門化しながら新しいビジネスを作り上げていくことができればそれが一番良いのではないか。儲けは必要だが、次の時代は店舗以外の分野でもさらに発展していける、そういう企業にしたい」


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