豊月は苫小牧市澄川町の食品スーパー「フードD澄川食彩館」を激安店の「フードDザ・プライス」に転換、17日にオープンした。生鮮食品の低価格化を図り、「この地域では最も安い価格で提供する」(豊岡憲治社長)。同社は、価格とは一線を画した高質の食品スーパーも展開しているが、地域によって店舗のバリエーションを変え、二正面作戦で流通激戦を生き抜く考えだ。(写真は、17日にオープンしたフードDザ・プライスの店舗と青果売場)
 
 北海道産グリーンアスパラ75円、道内産若鶏もも肉100㌘当たり68円、キャベツ1玉65円、玉ねぎ約2㌔ネット150円など「毎日激安価格」の商品が店頭に並ぶ。
 
「ザ・プライス」への転換は、この地域の価格競争が激しく競合店舗のチラシによる販促が恒常的に行われているためで、「価格面で攻めないと他店に売り上げを奪われる。黙っているわけには行かない。存在感を出すために、毎日が激安価格の店舗に業態転換した」と豊岡社長は言う。
 
 フードD澄川食彩館を展開していたときには、SKU(在庫保管単位)が9000近くあったが、「ザ・プライス」では5000に絞った。「効率の問題もあるが4000くらいにしたい」(同)。店舗面積は約1400平方㍍で従来と変わらない。
 
 店舗の粗利はこれまでの17・5%から13%に4ポイント下げるという。「月1億円を売っていた店だから、同じ利益を出すためには1億1~2千万円売らないといけない。食彩館時代と比べて30%増の売り上げを目指す」(同)
 
「ザ・プライス」の近隣には、マックスバリュ澄川町店やコープさっぽろときわ町店のほか、低価格を売り物にしているトライアル苫小牧店などがある。
 
 店長の斎藤宣行氏は、「店舗の周辺には高齢世帯の方が多いので、地域にマッチした価格と品揃えでお客様にお応えしていきます。たくさん買うと安くなる一物三価ではなくて、一個買っても安い一物一価で提供します。ホウレンソウを一束要らない買い物客にも半分にして提供するなど、地域に密着した安さをアピールしたい」と語った。
 
 青果の粗利は10%に設定しているため、価格面でのアピール度は高い。同社では2~3ヵ月で激安店として買い物客に浸透すると見ており、今後苫小牧の店舗を中心に「食彩館」から「ザ・プライス」への転換も検討する。
 
 豊月は、もともとディスカウントで業績を拡大させてきた食品スーパー。澄川の店舗は27年前にオープンし「豊月ストアー」、「フードD2」、「食彩館」と時代に応じて名前を変えてきており「フードDザ・プライス」は4回目の店舗名変更になる。
 
 同社では、一方で高質食品スーパーも展開しており、こちらは売り上げに占める生鮮比率を55%程度まで高めて粗利を取っていく店舗と位置づけている。苫小牧日新町の「Vian」、江別市大麻の「LISTA」、札幌市清田区の「VAlue」の3店舗で今年9月初旬には札幌市手稲区前田に同様の高質店舗を出店する。
 
 豊岡社長は、「高質店が軌道に乗るのには3年程度かかる」と述べており、短期集中で売り上げ、利益を稼ぐ激安店と長期的な基盤固めの高質店の使い分けをする考え。
 
 食品スーパー業界では、各社間で店舗名の統一感が薄れてきている。「ビッグハウス」、「ザ・ビッグ」、「プライスマート」、「ザ・プライス」、「スーパーアークスエクスプレス」、「ザ・ビッグエクスプレス」――店舗名=社名の時代が過ぎ去ろうとしているのかも知れない。



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