コープさっぽろの大見英明理事長(59)へのインタビュー2回目は、宅配トドックの進化と病院給食について大見氏の持論をお伝えする。アマゾンとの競合について大見理事長は、コスト構造の圧倒的優位性を強調、アマゾンが生鮮でシェアを伸ばすことは難しいと断言する。※インタビューは3回にわたって掲載します。IMG_0398(写真は、インタビューに答える大見英明理事長)

 Q 宅配トドックが成長ドライバーになっていますね。

「宅配事業における取扱品目の限界性をどこまで超えるかという挑戦の一環として、『オートストア』を導入、8000品目増を実現します。従来の取扱品目と合計すると、約2万品目が常時毎週の商品として取り扱いできる状態になります」

「16年度は宅配トドック10周年で、その時に私たちは3ヵ年計画を策定しました。全道に宅配センターを整備し、輸送範囲が広すぎる帯広地区は分割してセンターを新たに作り、函館も近く分割してセンターを分けます。移動距離1時間以内で対応できるようにデポ(小型拠点)も作ってきました。昨年度は7デポを設置、今年度も同数のデポを新設して、宅配拠点から1時間以内に運べるようにします。そうすると配送効率は一段と上がります。約1000台の宅配専用トラックが1時間圏内で各地域に行けるようになります」

「現在、宅配利用の組合員世帯は34万世帯で毎年7%ほど利用世帯は増えています。16年度の損益では8・6%の経常剰余が出ています。北海道のような広域分散の地域で移動距離が長いにもかかわらず、国内生協の中では一番収益力の高い宅配事業になりました。今後2年間で経常剰余10%にすることを目標にしています。利用世帯も6~7年後には50万世帯、世帯シェア20%を目指しています」

 Q アマゾンとの競合の可能性は?

「アマゾンの業態は『今、欲しい』からネットで注文するもので、1回の注文数はせいぜい1個か2個。1個の注文は全体の8割だと聞いています。その1個のために物流コストがかかってくる。ところが、宅配トドックは1週間分のまとめ買いで、1回の納品数は平均15個。しかも再配達がありません。アマゾンと比べて物流コストでは私たちの方が圧倒的に優位です」

「アマゾンは首都圏で生鮮品の配達を行っていますが、物流センターに生鮮の在庫を持たなければならないなど不利な点があります。宅配トドックは、1週間前予約でスルー物流で在庫が滞留しないためロスがありません。組合員世帯から注文を受けた野菜類は、入荷段階から低温センターに入れて個包装をして低温物流のままセンターから自宅まで搬送するので、鮮度の良い状態を保てます。アマゾンが生鮮系で頑張れるかというと私は無理だと思う。私たちの水準には勝てないでしょう。1週間1回、まとめ買いの宅配トドックは、人々の生活リズムにぴったりと合っているのです」

 Q 病院給食も昨年からスタートしました。

「高齢者などにお弁当を届ける配食事業の一環として、幼稚園児向けにアレルギーに対応したお弁当も作り分けて届けています。こうしたノウハウがあれば、病気の症状に合わせたお弁当を作ることもできるということで、昨年から禎心会病院で始めたのが病院給食です。今年度からは、禎心会の高齢者施設などにも広げます」

「病院給食として数ヵ所に対応することになるため、内部のシステム構築に現在、取り組んでいる段階です。当生協にはデリカ工場もありますし配達も自前でできます。システム構築の後に、道内の病院給食でチェーン展開を進めていく予定です」
(次回に続く)



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