日本最北の百貨店だった旭川市の西武旭川店が9月30日、午後7時半で41年間の歴史に幕を閉じた。旭川市民だけでなく道北に住む人々にとって百貨店の消滅は非日常の空間がなくなることを意味し、消費を通じて醸し出されるその土地特有の市民感覚にも変化を与えそうだ。IMG_8741(写真は、西武旭川店閉店で集まった約1000人の市民を前に最後の別れをする遠藤進一店長や売場責任者たち=2016年9月30日午後7時50分)

 大都市に住む人たちにとって、百貨店はあって当たり前の存在。小さな時から自身や家族のハレの日の高揚感を満たしてくれる存在が百貨店。小売りの多様化で専門量販店が次々に生まれ、日常の消費が分散していく中でも、百貨店は消費の王様という意識は心のどこかで残っている。大都市にはそれを支えるパイ(市場の大きさ)がある。

 しかし、地方都市にとって百貨店は不動の存在ではない。北海道第2の都市、人口約34万人の旭川市でも百貨店を維持するだけの都市力と言えるものがなかった。小売りの多様化で薄まった百貨店需要をコスト削減や消費喚起などの自主努力で回復できなかった。消費の王様は裸同然だった。

 百貨店が消滅した旭川市は、消費を通じた非日常の空間がなくなることを意味する。すぐにではなく、これからゆっくりと百貨店ロスの影響が出てくるだろう。
 旭川市在住のマスコミ人は、「百貨店、とりわけ全国系のひとつである西武があることは、マチの格を上げていた。百貨店があるのとないのとでは市民の感情にも大きな差がある」と話す。

 これから旭川市民や道北の人たちは、非日常を求めて百貨店の残る札幌に足を運ぶことになるのかも知れない。地域の在り様がその土地の精神風土を形づくるとすれば、百貨店の消滅は心のふるさとをひとつ失うことに繋がる。百貨店の存在はそれほど大きい。



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