西武旭川店(旭川市)の9月末閉店が決まった。8日午後に開かれたセブン&アイ・ホールディングス(HD、本社・東京都千代田区)の取締役会で正式決定されたが、その午前中には、傘下のそごう・西武の幹部らが地元旭川の西川将人市長や商工会議所幹部に閉店を伝えていた。閉店が決定したこの日、西武旭川店を歩いた。IMG_2501
旭川西武閉店の言葉(写真は、西武旭川店とそごう・西武が市長や商議所会頭に手渡した文書のコピー)

 旭川は薄曇りの天気。札幌は日中8度まで気温が上がったが旭川は5度でみぞれ交じりの小雨が降っていた。店は平和通買物公園の玄関口にある。一条通と宮下通に面して交通量も多く、まさに旭川の中心地に建つ。
 1条通側のA館は百貨店らしいフロア構成。1階に化粧品、2階から上は婦人服の売場が7階まで続く。1階からエスカレーターに乗るが、どのフロアにも買い物客はほとんどいない。エスカレーターでどんどん上がって行っても同じ。すれ違う買い物客はいない。館内放送が甲高く響くのが印象に残るだけだった。
 
 7階から8階に向かうエスカレーターに乗ると、急に雑踏から漏れてくるざわめきが聞こえ始めた。小さい子どもが泣く声や多くの声がひと塊りになって聞こえてくる。8階に着いてわかった。道内の名物弁当や食材を集めた北海道うまいもの大会の会場だったのである。この日が催事の初日。いかめしを味付けする香ばしい臭いが8階を覆う。ここだけは、多くの人で賑わっていた。
 
 8階の連絡通路で宮下通側のB館に向かう。この館にはロフトや無印良品など旧西武・西友系のテナントが入るほか、紳士服、家庭用品売場といったフロアからなる。カジュアルな雰囲気が館全体の印象だが、やはりこちらも人が少ない。人影のない下りのエスカレーターが規則正しく動いているのが印象的だった。
 
 オープン40年の西武旭川店の閉店は、来るべきものが来ただけ。閉店が決まったこの日も、館内の買い物物客が増えた様子はない。地下食品売場と催事フロアだけが賑わう地方百貨店の構造問題を端的に表している。それを克服することができなかった。
 
 北海道で百貨店が消える光景は何度も見た。時代の流れに対応できなかった巨艦は消えゆく運命だが、特に旭川は札幌と近いことが裏目に出て札幌に消費が吸われるストロー現象を加速させた。昨年3月末に全国のイオンとして初の駅直結モール「イオンモール旭川駅前」がオープンしたことも大きく影響した。
 
 人口約34万人の北海道第2の都市、旭川でも百貨店を支える需要がないことがあらためて分かった。凋落一方の小売業が百貨店とすれば、増え続けているのがコンビニエンスストア。広い面積にマチが分散している北海道ではとりわけコンビニのニーズは大きい。セブン&アイ・HDは、「百貨店よりコンビニ」を選択せざるを得なかった。
 

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