「エクスプレスって、聞いてびっくりした」――と、言うのは、マックスバリュ北海道の幹部だ。それもそのはず、12月16日にアークスグループのラルズがオープンさせた札幌市北区新川西の店舗名が『スーパーアークスエクスプレス』。マックスバリュは既に『ザ・ビッグエクスプレス』の店舗名で激安食品スーパーを展開、サブネームが同じことに「そこまでやるか」と感じたに違いない。


「エクスプレスは速いという意味があるが、もじれば『エクス=エキスに通じるから良いものが詰まった中身』と、それを『プレス=押し出す』、つまり良いものを仕入れて素早くお客様に提供するという意味にも通じる」と、この日、『スーパーアークスエクスプレス』のオープンに立ち合った横山清アークス社長・ラルズ会長はサブネームにエクスプレスを採用した理由をこう語る。
一方、マックスバリュ北海道は今年2月に激安食品スーパーの業態、『ザ・ビッグ』の展開を始めたが、そのうち比較的店舗面積の小さい平岸店(札幌市豊平区)と栄町店(同北区)に『エクスプレス』と冠している。
また、同社が展開している地下鉄駅に直結しているターミナル店舗のリフレッシュに『エクスプレス』をつけることも検討していただけに、アークスの“奇襲”に出鼻を挫かれた格好だ。
アークスグループとマックスバリュ北海道・イオン北海道を擁するイオングループは道内流通の2強として、全道各地で向き合っている。戦況は、アイウエオ順と同じく「ア高イ低」だが、昨年4月にマックスバリュ社長に就任した山尾啓一さんは巻き返しにあの手この手を繰り出している。
そのひとつが『ザ・ビッグ』。
流通関係者は、「道内で『ビッグ』と名前の付いた食品スーパーといえば、ラルズ成長の原動力になった『ビッグハウス』がすぐに浮かぶ。『ビッグ』は道内食品スーパーの間では縁起の良い普通名詞なんです。マックスバリュ北海道は本州のマックスバリュ西日本や東海で成功を収めている低価格業態『ザ・ビッグ』を道内展開することにしたもので、たまたま『ビッグハウス』と名前の一部がバッティングしただけ。それでも、ラルズにしてみれば面白くないはず」と解説する。
今回、ラルズが『エクスプレス』と冠したのは、その意趣返しという側面もありそうだ。
『スーパーアークスエクスプレス』がオープンした場所は、かつてマックスバリュ北海道も店舗を構えていた場所。丸井今井系の食品スーパーや海商も店舗を構えたが、いずれも消費者をしっかり掴むことができなかった。ラルズは土地建物を取得し改装にも取得費とほぼ同額を投じてイメージを一新したうえでオープンさせた。
横山社長は、こう語っている。
「新川と新川通がネックになって西側からの買い物客がこないことがこれまでバツ4の原因。16年前、当時のニシムラが北区太平で展開していた食品スーパーを買い取り、居抜き出店したのが『ビッグハウス』の始まりだが、当時も創成川と石狩街道がネックになって屯田地区からの買い物客が来ないと言われていた。しかし、ビッグハウス1号店の太平店は、ピーク時に年商50億円、ニシムラ時代の10倍もの売上げを達成したことがある。『スーパーアークスエクスプレス』は、ビッグハウスの攻撃型店舗であり、実験店舗、業態開発拠点、トレーニングセンターの3つの役割がある。私が関わった以上、閉店はしない」
店舗名は消費者にイメージを刷り込むためにもっとも大切な要素。「ア」と「イ」が店舗名の普通名詞を交互に取り入れるのは、いずれ「ア・イ連合」につながって行く予定調和の萌芽となるのか。
(サブネームの『エクスプレス』が重複する『ザ・ビッグエクスプレス』栄町店と『スーパーアークスエクスプレス』新川西店)

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