IMG_6354(単独ローカルとして生き残るのがミッションと言う桐生宇優社長)

 ――社長に就任して初めての新店となった「くんねっぷ店」ですが、あらためて社長なりの位置づけを教えてください。
 
 桐生 先にお話した通り業務改善のモデル店であるということと、もう一つ重要なのは地域密着型のモデル店でなければならないということ。地域のお客様が毎日買い物にきてくれ、地域シェアをどれだけとれるかというのが重要な課題だと考えています。これができなければ他地域への波及はできない。
 
 ――売場面積1000㎡以下の地域小型店というのも初めてですし、人口減少の地方で買い物インフラを作っていくという意味で、「くんねっぷ店」の成否は今後に大きな意味があります。
 
 桐生 大型店を年に1店舗ずつ出すことが基本的な出店戦略ですが、適した立地が少なくなってしまったのが現状。たまたま昨年は、は「倶知安店」が当社の方針に乗った形で出店できた成功例ですが、こういう立地を毎年見つけるのは至難の技。急成長は望んでいませんが、スーパーマーケットいうのは持続的に売上げを少しずつ伸ばすことが大切。今回の「くんねっぷ店」はそれを補完する意味があります。
 
 ――イオングループやコープさっぽろグループ、アークスグループと寡占化が進む中、単独ローカルでの生き残りという考えは堅持するのですか。
 
 桐生 崩しません。これが僕のミッションだと思っています。
 
 ――大手3極にセブン&アイ・ホールディングスグループを含めて4極のグループに入るメリットを感じないということですね。
 
 桐生 入るメリットはあると思いますし、当然理解はしています。理解はしていますが、入らないメリットもあるので、そのメリットを活かしたい。私たちの規模だからできることが沢山あります。例えば生鮮食品。野菜にしても魚にしても良いものは量が限られている。当社ですら全店に置く分が揃わない現実があります。農家など生産者としっかりと結びつきながらやっていければ良いと考えています。
 もう一つ、規模の大きなスーパーではバイヤーと生産者という繋がりになっていると思いますが、当社の規模であれば、会社と生産者という繋がりでやっていける。それはものすごく大事な話で、バイヤーが変わったから商品を変えるということはなく、会社と生産者が付き合っていくので、良いものであれば末永く付き合っていくことができます。メリットは特に生鮮食品で出てきます。一般食品は規模が大きいほうが良いですが、そこは全国系の共同仕入れ会社、CGCグループに加盟しているので、大きなデメリットは今のところありません。
 
 ――全国の中でラッキーのように独立系で成長しているスーパーがありますが、独立系同士の連携や情報交換はありますか。
 
 桐生 表だってありませんが、実際には親密に情報交換しています。全国にそういうお店はありますが、やはり強い。周りにディスカウント店があろうと大手があろうと独立独歩でしっかり経常利益を上げているモデルが存在するので、大きいことイコール良いことだとは一切感じません。
 
 ――旗艦店である「山の手店」(札幌市西区)を昨年建て替えて7月で1年が経ちます。手応えはどうですか。
 
 桐生 建て替えで4ヵ月休んだので毎日来ているお客様が他のスーパーに行ってしまいましたが、建て替えオープン当初からは、離れたところから来られるお客様も増えました。昨年末までには元々のお客様も戻ってきたので、広域の商圏から来ているお客様がプラスアルファとなり、最近は月単位で当社店舗の売上げナンバーワンになっていますから強い店になりました。
 
 ――旗艦店らしく目指すべき方向に近づいているということですか。
 
 桐生 そうですね、地域のシェアを取りながら“ハレの日”の食材を求めて遠いところからお客様に来ていただき、地域密着&プラスアルファになってきたので理想的な集客になってきていると思います。
 
 ――衣料店についての出店戦略は。
 
 桐生 衣料店は新店単独とショッピングセンターへの出店、居抜き出店の3パターンがありますが、居抜きは駅前立地があればベストです。条件が合えば良いですが合わなくても周りのマーケットを調べて商圏があって売れる見込みなら出店します。
 
 ――衣料のウェートはどの程度ですか。
 
 桐生 当社の扱っているような衣料はニッチマーケット。高齢者は、下着など実用衣料を買う店が少なくなってきているのでそういった部分のニーズはあります。婦人服、紳士服を品揃えしていますが、基本的には日常生活で必要な衣料をしっかり揃えていきます。食品とのコンビネーションタイプの売場は今後ますます必要になってくるでしょう。
 
 ――今年の下期の状況をどう見ていますか。
 
 桐生 第1四半期の数字をベースに今の状態で地盤固めをしながら今期は進めたい。6月が若干、予算を下回りましたが7月は回復傾向なので、下期以降は営業力を前面に押し出します。
 
 ――利益率もある程度確保でき、今期は落ち込む要素も少ない。
 
 桐生 とにかく突飛なことをするつもりはありません。鮮度にしても、人の教育にしても急に変わることはないのでひとつひとつ積み上げていき、それが売上げにつながるのがスーパーマーケットだと思っています。地道にやっていくことだけです。
 
 ――スーパーは売上げが悪くなるとどんどん悪くなり、良くなるとどんどん良くなるものです。
 
 桐生 今年度は新店が2店舗(7月30日のオープンしたラッキーマート幌向店=岩見沢市)になったのでコストは上がりますが、売上げのベースはそれなりに取れると思う。売上げが少しでも伸びれば必ずプラスにつながりますが、地道にやって大風呂敷を広げるようなことはしません。
 
 ――堅実で持続的な成長を志向していることが良く理解できました。本日は、ありがとうございました。
 
《きりゅう・ひろまさ》1965年12月生まれ。88年3月千葉工業大卒、同年4月山一證券入社。92年1月北雄ラッキー入社、2007年5月取締役販売部長、09年9月常務取締役営業本部長、13年5月執行役員制導入らにつき取締役専務執行役員管理本部長兼総務部長、15年3月社長就任。

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