「パワーはあるのでご期待ください。来年もこの場所でお会いしましょう」――26日、札幌市中央区の札幌パークホテルで行われたアークスの株主懇談会。株主総会で議長の務めを終えたばかりの横山清社長の表情は晴れやかだった。5月15日で80歳を迎えて臨んだ54回目の総会。「地方から革新を起こす」。健康議長の舌鋒は色褪せていない。IMG_5287(写真は、株主総会の受付をする株主たち)

 株主総会に参加したのは684人。満80歳になったばかりの横山社長は、いつものように議長として議事を進行した。株主からの質問は①電気料金の値上げ対策②株式分割について③株の長期保有者への優遇について④政治との関わり、後継者問題について――の4点だったが、何と言ってもアークスの“今”の課題を象徴しているのが4番目の質問だった。
 
 本来なら総会の場ではタブーに近い質問。「そういう質問がフランクにできるほど株主と我々は近い距離にいる」と横山社長は語っていたが、政治に関する質問は、横山社長が今回の札幌市長選で当選した秋元克広候補を推し、後援会の大幹部として活動したことを問うもの。「北大同窓で個人として支援したので会社とは関係がなかった」と述べ理解を求めていた。
 
 最もナーバスな質問だったのはアークス唯一のリスクともされる後継者問題。80歳の横山社長の次を担う候補が見えてこないからだ。
「アークスにはスーパー10社の社長や幹部がいて人材はあまたいる。富士山のように誰かひとりということではなく八ヶ岳連峰のように対等なので誰が社長になっても私以上の経営はできる。何も未練があって社長をしている訳ではない。ご覧のように候補はいっぱいいますよ」と壇上の役員陣を紹介してリスクは杞憂と答えた。
 
 総会は63分で終了、その後、アークス傘下スーパーで提供している肉や寿司、惣菜を振る舞う懇談パーティーに入った。「地方から革新を起こす。新しい波は我々が起こす」、「1000億円、2000億円なんて達成できないと言われたが実現した。目標としている1兆円も無理だ、無理だと言われるが一緒になりたいスーパーは多い。地域でナンバーワンの勝ち組としか手を組まないから必ず実現できる」。横山社長の怪気炎は衰えるどころかますます盛んだ。
 
 5月15日が誕生日の著名人に瀬戸内寂聴がいる。横山社長よりひと回り以上、年上で今年93歳になった。その寂聴さんが言っている。「90年は短くてあっという間。まだ何が残せるか分からないが、これまで続けてきたことは『愛した、書いた、祈った』の3つに集約される」。
 
 横山社長の80年もあっという間だったに違いない。『売った、動いた、稼いだ』傘寿を超えた横山社長が首尾一貫して続けてきたのはこの3つだろう。そしてどれもがケタはずれている。
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