やはり帯広が動いた。マックスバリュ北海道(本社・札幌市中央区)がいちまる(同・帯広市)の事業を継承、食品スーパー(SM=スーパーマーケットの略)14店舗がマックスバリュ北海道の直轄になる。「帯広がキナ臭い」――今年初めからSM業界で噂されていたことは、いちまる解体のことだった。IMG_8180(写真は、いちまるの本社)

 マックスバリュ北海道がいちまると資本業務提携したのは、2013年10月のこと。その年の7月、いちまるはそれまで地場同士で手を取り合っていたダイイチ(本社・帯広市)がイトーヨーカ堂(同・東京都千代田区)と電撃的に資本業務提携していたことに反発、一方的にダイイチとの関係を断絶してイオングループのマックスバリュ北海道と手を結んだ。帯広など十勝圏が空白区だったマックスバリュ北海道にとって渡りに船の提携話だった。
 
「イオンとセブン&アイ・ホールディングスの代理戦争が始まる」――当時そんなふうにSM業界では見られていた。
 しかし、いちまると提携し40%強の資本参加をしたマックスバリュ北海道に対して、「ババを引いた」という声は当時からあった。というのも、超短期の提携決断を迫られていたためマックスバリュ北海道は最も神経を使わなければならなかった資産の再査定(デューデリジェンス)が不十分だったからだ。
 
 帯広の関係者の間では、「ダイイチと提携していたころのいちまるは、年間でも数千万円の赤字が出る程度だったが、イオングループ入りしたら赤字額は億円単位に膨らんだらしい」という噂が飛び交っていた。
 
 マックスバリュ北海道がいずれいちまるを子会社化することは早くから伝えられていたが、問題はその手法だった。いちまるに隠れ負債がなければスンナリと子会社化できたが、隠れ負債が想定外の額であれば抜本的な処理が必要。
 
「いちまるの法的処理か?」「いやいやそんなことをしたらマックスバリュ北海道に連なるイオングループの名折れだ」「じゃあどうする?」――行き着くところは、「いちまる解体」しかなかった。イオングループの風当たりを如何に小さくしつつ実を取るか、法的にも実務的にも社会的にも影響が最小限の方法として今回の『会社分割→グッドカンパニー、バッドカンパニー設立→グッドカンパニーが優良資産承継→マックスバリュ北海道がグッドカンパニーの全株取得』のストーリーが生まれた。
 いちまるは6月に会社分割、10月にマックスバリュ北海道がグッドカンパニーの全株を取得、資産と従業員を承継する。
 
 マックスバリュ北海道は、奇しくも道内SM業界の再編劇の主役に躍り出た。いちまるもそうだが、9月1日にはダイエー系のグルメシティ道内7店舗を承継するからだ。これで空白だった帯広・十勝、空白に近かった函館圏で確固たる地位を確立できる。
 しかし、難題もある。北海道ジャスコと札幌フードセンターの合併で2000年に生まれたマックスバリュ北海道は、その後08年に住友石炭鉱業系のSM会社、ジョイの吸収もしてきたが、合併のたびに異文化融合に時間を取られたからだ。今回はグルメシティ承継のすぐ後にいちまる承継が続く。寄り合い所帯の経営ほど困難を伴うものはない。揺れ動く道内SM業界でマックスバリュ北海道は「経営」のガバナンスに時間と意識を取られることは必定。本業専心とは行かないマックスバリュ北海道の足下を狙うSMにとって好機と映っているかも知れない。
 
■いちまる
・設立1955年11月
・代表者 加藤祐功社長
・資本金 3億9500万円(マックスバリュ北海道40・53%出資)
・営業収益 96億6400万円(15年2月期)
・従業員 正社員105人、アルバイト・パート500人(15年2月末現在)


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