P1070714 JR北海道が函館線大沼駅の貨物列車脱線事故を受けて道内路線を緊急点検した結果、社内規程を上回るレールの不具合が100ヵ所近くも見つかったことは、2年半後に迫った北海道新幹線新函館開業に大きく水を差すことになった。北海道新幹線はJR北海道が経営基盤を再構築する鍵になるが、現状の杜撰な保線管理や車両保全では「JR北海道には適格性がない」という声が出てくるのは避けられないだろう。(写真は、道庁前に建つ北海道新幹線札幌延伸決定を祝うサインポール)
 
 『JR北海道は第二の苫東』という説がある。多額の国家資金と民間投資で開発された広大な苫小牧東部工業団地は、工場誘致が進まず運営していた第3セクターの苫小牧東部開発は経営破綻。債権放棄や政府系金融機関の合併などを伴いながら『苫東』として再出発した。
 
 苫小牧東部開発が破綻したのは重厚長大から軽薄短小、ハードからソフトへと産業構造が変化する中で誘致のミスマッチが拡大していったことが大きい。
JR北海道も1987年発足以来、経営安定基金という国の資金を投入しつつも札幌圏を除く地方路線の利用者減少で鉄道事業は黒字化のメドがたっていない。
 
 資金不足は車両の更新や線路保全の外注化、子会社化を余儀なくされ技術の伝承や指揮命令系統の機能不全を招いている。JR北海道は2年ほど前に国によるさらなる資金投入を受けたものの経営改善の道筋は見えていない。
 
 安全に関わる車両故障や今回のような保線業務の不祥事はさらなる利用者離れを招き、経営悪化に追い打ちをかけることになりかねない。多額の国家資金を投入しても先行きが見えない姿は旧苫東とダブる。
 
 2年半後に北海道新幹線新函館開業が迫っている中で、こうした“JR北海道不信”を払拭できるかどうかには疑問符が付く。
 
 国やJR北海道は、持続可能な経営体制を再構築しなければ、北海道新幹線の新函館開業効果を活かすことはできないだろう。鉄路を保有する会社や列車を走らせる運営会社というような“上下分離”、あるいはJR東日本との経営統合など国を巻き込んだ政策総動員による危機突破のシナリオが不可欠である。


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