経営の展望が開けない北海道エアシステム(HAC)の社長を含む役員陣が7月末大幅に入れ替わる。JAL出身の西村公利社長をはじめ非常勤の高井修副社長(道副知事)など5人が交代、新体制で路線縮小や三沢線のチャーター便開設などに取り組む。HAC経営危機が表面化した2月以降、筆頭株主の道が主導して改革策が講じられてきたが、西村社長などHAC経営陣の生の声は殆ど聞かれなかった。約100人が在籍するHACの現場の声が反映されていない再建策で果たして社内の士気は保てるのか。(写真は、辞任する西村公利社長)
 
 HACの危機は今年2月に明らかになったが、以降の再建に向けた改革策は道が主導的に策定、西村社長など経営の現場を預かる経営陣から再建に関する提案は全く聞こえてこなかった。代表権を持つトップの意思が反映されない経営は、経営とは言えずHACは単なる執行機関でしか有り得ない。
 
 道議会議員の間でも、「HACは道の操り人形のようで経営者不在の状態。HACの顔が見えない」という意見もあり、ガバナンスを保てるのか疑問視する指摘もある。
 
 離島路線など元々公共性が高く、純民間経営に馴染まない要素が多いため、筆頭株主である道が主導することは致し方ないとしても、自由度のない経営では公務員ではないHAC社員の士気は相当程度に低下するのは避けられないだろう。
 
 HACの社員数は、前年度で107人だったが、現在は100人程度減った模様だ。減少した社員のうち2人は機長職を務めていたが、HAC内部からは「運航と整備の職に就いている社員はもう減らせない」という。
 
 しかし、パイロットの人材は台頭するLCC(格安航空会社)の需要に支えられて買い手市場になっており、HACの機長・副操縦士含めた約20人がLCCに流出する可能性はないとは言えない。
 
 HACは、道の資金支援によって路線縮小など経営改善に向けて駒を進めることになるが、組織にとって最も必要なモチベーションをどう維持向上させるのか、「ヒト・モノ・カネ」の三位一体改革は依然として不完全なままだ。


この記事は参考になりましたか?