新年度からスタートする新生HAC(北海道エアシステム)の社長に現在HAC社長を務める西村公利氏(54)が就任する見通しになった。JALの経営撤退によってHACをオール北海道で支える目的で誕生する新生HACは、旧体制のトップを続投させるしか選択肢がなかったのか。(写真は、丘珠空港で滑走路に向かうHAC機)


道の建設部が主導してきた新生HACの門出は、結局道庁スタンダードなものになった。
建設部は公共事業の発注部局であり道路や橋などを専門とする土木技術者の集団。その絆は建設一家と評され、知事部局の中では農政一家と並び称されるほど一体感は強い。
もっとも農政部は、旧農務部と旧農地開発部が横路道政時代に一体化されたため、絆が深いのは旧農開。旧農開も農業土木事業の発注部局であり、建設部と同じような権限を持つ。
さる道庁高官OBは、「そもそもHACの新体制づくりは、以前の企画振興部=現在の総合政策部の仕事ではなかったのか。関係自治体や経済界との交渉、調整を建設部が担うのには荷が重すぎた」と言う。
2年前の機構改革で、空港管理を担当する建設部に企画振興部で所管していた航空行政部門を一体化させ、上下一体(空港と航空の一元化)の政策を打ち出せるようにした。
新生HAC作りは、その行政パフォーマンスの試金石になる案件だった。
しかし、前述したように建設部は公共事業のコントローラー。“創造”ではなく“指示”が職場の文化として染み付いている。待ちの行政であって攻めの行政を司る機関ではない。
さらに秘密主義も新生HAC作りの理解を得るのに大きくマイナスになった。まさか入札価格の漏洩を危惧したわけではないだろうが、この場合必要のない廉潔性から生じるディスクローズのなさは、札幌市をはじめ多くの関係自治体、経済界の不信感を高めた。
丘珠空港への一拠点化を巡る札幌市との迷走はその典型。
そして最後の最後がトップ人事。「企業経営の経験者で航空業界に詳しい人物」という社長像を建設部が示したことで結局は自縄自縛を招いてしまった。
新生HACの「事業プラン策定」、「関係自治体や経済界の出資」、「新社長の人選」というリセット・スタートに必要な3点セットはいずれも時間の壁と秘密主義に遮られ議論を深められずに急場しのぎにならざるを得なかった。
新生HACは、道が筆頭株主として自治体や経済界の利害調整を担い、道庁の新生スタンダードを作り上げていく絶好の機会でもあった。新生HACと類似の事業創出は今後増えていくものと見られる。それなのに、『昔の名前で出ています』では看板の架け替えにもならない。

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