北海道財務局は8日、地域密着型金融シンポジウムを札幌第一合同庁舎講堂で開催した。今月末に中小企業金融円滑化法が期限を迎えるに当たり、地域金融機関が地域の企業と連携した取り組みをどう強化し経済活性化に結び付けていくなど、事例報告とパネルディスカッションで議論を深めた。道内の地銀、信金、信組、労働金庫などから関係者約130人が出席した。(写真は、平成24年度顕彰で賞状を受け取る北洋銀行石井純二頭取=左と地域金融機関の役割が討議されたパネルディスカッション)
 
 シンポジウムでは、冒頭に地域密着の取り組みでモデルケースとなる金融機関の顕彰式が行われた。平成24年度は食品産業支援の北洋銀行、中小企業再生支援協議会を活用した事業再生支援の北門信金、地中熱ヒートポンプを利用した支店で環境保全を図った帯広信金、東京農大との産学連携助成を整備した網走信金が受賞、吉田英都道財務局長から頭取や理事長に賞状が手渡された。
 
 その後、仙台銀行の三井精一頭取が「東日本大震災からの復興と地元企業の再生に向けて」と題して講演、三井頭取は被災地の金融機関として復興応援体制を紹介するとともに復興担当の「地元企業応援部」を5拠点60人体制で新設し「長期的安定的に取り組む体制を作っている」と実例を挙げて話した。
 
 続いて行われたパネルディスカッションでは「地域経済活性化に向け、いま、地域金融機関に求められるもの」をテーマに北海道銀行笹原晶博副頭取や池田食品の池田光司代表取締役、近藤工業佐藤慶一代表取締役社長、仙台銀の三井頭取がパネリストとして参加。 
笹原氏は取引先の事業承継や幹部社員養成のため経営塾、幹部塾を主宰しているほか北海道中小企業家同友会と提携して若手社員育成の講座を開催していることを説明し、「地道に今後も人づくりを続けていく」と述べた。
 
 池田氏は食品製造業にとって食品機械にはノウハウが詰まっており同業者にノウハウが漏れないように信頼できる機械メーカーの存在が不可欠と語り、「取引先の揺れ動く気持ちを理解してくれる金融機関なら信頼がより深まって距離は一段と近くなる。地元の金融機関は将来もずっと一緒にいる安心感がある」とし、「支店長など幹部に女性を活用すれば違った観点での企業分析ができるのではないか」と提案した。
 
 佐藤氏は、会社がある小樽市は人口減少と高齢化が進んでいることから「老健施設やサービス付高齢者向け住宅に入るのにそれまで住んでいた家屋を担保にしたリバースモーゲージを活用できるようにしたり、地元で進められる小規模のPFI(プライベート・イニシアチブ・ファイナンス)も検討してもらいたい」と地域金融機関の新たな役割を示唆した。
 
 コメンーターとして参加した小樽商大の齋藤一朗教授は、「地域金融機関はネットワークと信頼、人が背骨になってそれぞれが持つコンテンツを乗せることによって特色が出てくる。取引先のニーズを顕在化させて解決していく組織風土の醸成が鍵になるだろう」と締めくくった。


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