中小企業の金利減免や返済期限の延長などを目的にした金融円滑化法の1年延長がほぼ決まったが、金融機関にとっての影響は殆どないと見られている。円滑化法適用企業はほぼ出尽くしており、新たな適用企業は限られていることや融資先企業の財務に応じた債務者区分も厳格に査定されており、隠れ不良債権がさらに膨らむ懸念もないと見られているためだ。
 
「そもそも金融円滑化法の考え方は、我々のミッション」と言うのは、ある信用金庫のトップ。融資先企業の金利減免や返済期間のリスケジューリングは円滑化法以前から信金業界では一般的に行われていた。
 
「問題は債務者がどういう状況であるかということをしっかり把握できているかどうかということ。返済期限の延長や減免に関係なく企業の財務がどういう状況であるかを正確に把握してそれにしたがって返済方法を一緒に考えていくのは、地域に根ざした信金では当たり前のように行っている」とそのトップは語る。
 
 その信金では、円滑化法を適用している融資先企業の債務者区分は破綻懸念先が大半を占めている。実態が破綻懸念先なのに、円滑化法で要注意や要管理の債務者区分に留め置いているところはないという。
 
「破綻懸念先でもコンサルタントを入れて売上増に繋がるバックアップ体制を取っており、債務者区分をワンランクでもツーランクでも引き上げるためにニューマネーも投入している」
 このため、円滑化法が延長されても影響は殆どない。
  
 道内銀行のトップも、「円滑化法適用企業は、我々の取引先では出尽くしている。適用企業から、抜本的且つ合理的な再生計画が出ており、我々はそれをフォローする動きに入っている。その中でもう望みがない先や、我々の言うことを聞いてくれない先などに対して、債務者区分を下げるところは下げている。1年延長になったからと言って急に債務者区分を変えることにはならない」として、経営に影響するような隠れ不良債権が円滑化法の延長によって膨らむことはないと断言する。
  
 金融円滑化法は、実質的に倒産状態の企業を延命しているだけという議論もあるが、金融機関のコンサル機能が発揮されて融資先企業の業績改善に結びつけば、景気の下支えに繋がる。1年間の延長で、いかに業績改善の端緒を掴むか、金融機関のコンサル機能が試されることにもなりそうだ。



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