北洋銀行の横内龍三頭取は、『活力ある地域経済を目指して』をテーマに講演、北海道経済の行方について指針や方向性を示した。横内頭取は旧知の畑中龍太郎金融庁長官から「北極圏航路について北海道ではどう考えているのですか」という質問を受けたエピソードを紹介、先を見据えた北海道のあるべき姿を議論する大切さを訴えた。講演は18日、日本証券アナリスト協会が主催して札幌証券取引所で行われた。(写真は、講演する横内龍三頭取)
 
 横内頭取は、北海道経済の実態について、「生産年齢人口の減少、高齢化が進み道内GDPの伸び率がゼロ近傍で停滞している。製造業が弱いという構造要因に公共事業の減少も重なり、①事業所数の減少②失業率の高止まり③有効求人倍率の全国最下位④生活保護者の増加⑤道民所得の暫減――という現象が起こっている。中央や全国平均との格差は広がりつつある」と述べた。
 
 北海道経済がどう進むのかについて、食と観光という成長分野で重点的な拡大策を取るため食クラスター事業を推進すべきと見解を示したうえで、北海道の大学に注目していることを強調。「医大が3校、工業系大学も札幌や地域にあり畜産系も層が厚い。ひとつの地域にこれだけの大学が揃っているところはあまりない。大学のあるマチでの産官学連携に期待し、地域からイノベーションや新しい事業を起こす起業家が生まれてくる環境が整っている」と語った。
 
 横内頭取は日銀時代から交流のあった畑中金融庁長官から、『北海道は北極圏航路についてどれだけ真剣に考えているんですか』と聞かれたことを紹介し、将来的に氷が溶けて北極圏を通過する航路が現実化すれば北海道経済にとって起爆剤になる可能性があるにも関わらず、真剣に議論されていないことに危惧を抱いてることを明らかにし、「地域エゴを克服して北海道のあるべき姿を考えなければいけない」と提案した。
 
 横内頭取は机の引き出しにスペインの硬貨をお守りのように大事にしまっているという。硬貨には王宮の門柱がデザインされていて門柱には小さな文字で『PLUS ULTRA』と刻まれている。「ラテン語でプルス・ウルトラと書かれていますが、それは地中海から大西洋、太平洋へ出て行ったスペインの大航海時代のキーワードでもあったのです。つまり、『まだ先はある、常識にとどまっていてはいけない』という意味。北海道の課題解決にも先に希望を持って挑戦していきたい」と締めくくっていた。


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